凍結
「未来、それ本当…?」
リンが疑うような目で見てきた。あたしは即座に否定したかった。
「違う、あたしは…」
すると、ミライがねっとりとした甘い声であたしの声を遮った。
「本心を見つめるのよ、ミク。あなただって何度も思ったことがあるでしょう?『怖い顔した人形に囲まれたくない、なんでママはこんなに怖い人形をくれるの?』って」
ミライは、ニヤリと笑ってそのまま話を続けた。
「ほとんどの人形にはね、人の魂とかが宿っているのよ。未練があれば、そりゃ怖い顔だってするわ。あたしもそうよ。もともとは人間だったけど、交通事故で死んだ。もっとも、あたしが死んだのは海外で、しかも遺体の保存方法が珍しかったから、その体は焼却ではなく凍結されたけど。そこで、あたしは死んだ人間の体を凍結して、そこから魂を取り出すっていう技法を使い始めたのよ。でも、それじゃダメだった。もっと生きたいとか、最後に○○だけはやりたかった、とか…、未練たらたら。可愛い顔した人形なんて作れなかったわ。だから、生きてるうちに人間を凍結しようと思って。そうしたら大成功!見事、可愛い人形がたくさんできたってわけ。あなたの夢が叶ったあと、あたしは最終的にあなたの体を凍結して人形にしようとしてたのよ、あたしたちの悲しみを味わわせる為に。ほら、あと一体消せば終わりよ!」
ミライは嬉しそうに指をパチンと鳴らした。すると、人が入った状態のまま、クリスタルは粉々に割れ、人間がいた跡形ですら無くなった。
「あなたの夢はこれでおしまい。ここからは、あなたがあたしの夢を叶える番よ」
醜く歪んだ笑みを浮かべながら、悠然とこちらに歩いてくるミライ。あたしは、覚悟を決めた。
「違う、あたしじゃない。あなたは夢を叶える前に散るの!」
先程割れたクリスタルの破片を剣がわりにして、あたしはミライに立ち向かった。ミライは、持っていた王笏を手に防御している。共に互角の戦いを広げているかと思えば、ミライは突然、不気味な高笑いを始めた。
「とうに絶望したと思っていたのに。その目に宿る意思は本物ね。
でも、もう遅いわ。時間切れよ!」
ミライは再び、パチンと指を鳴らした。すると、あたしの足元がみるみるうちにクリスタルに変わり、あたしの足を埋めていく。
「ふふふ。凍結されそうになる気分はどう?全て忘れて眠ってしまいなさい。それまで、人生のエンドロールに浸っていればいいわ」
すると、耳元でミライが囁いた。
「あなたなんて、この世にはもういらない存在なのよ。今頃、リンも裏切られたって思っているでしょうね」
「…!?」
すると、私の体はクリスタルで一瞬にして包まれた。身動きなんてもちろん取れない。
だんだんと意識が薄れて、今までのことが走馬灯のように駆け巡った。
「これが人生のエンドロール、か」
あたしの意識は、深い深い海の底へ行くように落ちていった。
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