Encore・Birhday
衝撃的な人形を見てから、一夜が明けた。いつものように起き、階下に行くと、ママ、兄の
「家族が揃うなんてめずらし…」
「未来、ハッピーバースデー!」
「16歳、おめでと」
「おめれろー!」
「あ、そういえば、今日誕生日だったね…。色々ありすぎて忘れてた!」
ママ、お兄ちゃん、呂律が回ってないけど瑠華も祝ってくれた。
「はい、プレゼントよー」
毎年恒例の人形だ。
包みを開くと、私は硬直した。
「えっ…。嘘、でしょ…」
その人形は、昨日見たもの…リンにそっくりのあの人形だったからだ。
「可愛いでしょ?仕事の帰りに寄ったら一目惚れしちゃったの!リカちゃんみたいなタイプの人形は家にまだ無かったからいいかなーって思って!」
ママはそう言うけど、あたしには仕組まれてるとしか思えなかった。
とりあえず、学校に遅れそうな時間になったため、慌てて制服に着替えて学校に走って行くことになってしまった。
「遅いぞ、透門!…だが、事件に巻き込まれてなくて良かったよ」
先生に怒られることは覚悟してたけど、誘拐事件とかの心配もあってか、"遅いぞ"の一言で済んだ。
でも、あたしはクラスを見渡して衝撃を受けた。
昨日までいたのは、20人弱の人たち。でも、今日は15人。
いない人の中には、優羽も含まれていた。
「ヤバイな、これ…」「もう帰ろう!」「家にいた方がいいよ、これ」「家より学校待機の方がいいかもね」
クラスがざわつき始める。
その時、教室の窓から見えるビルの大型テレビから流れるニュースが目に留まった。
「みんな、静かに!あれ見て!」
あたしが声をかけると、みんなのテレビを見る顔には恐怖がありありと浮かび始めた。
『ここで臨時ニュースです。
東京都心での誘拐が相次いで起きており、その件数は50000件を超えている模様です。
どの年齢層も誘拐されており、その中でも学生層の誘拐が相次いでいます。
マイスタ付近の学校でも、かなりの児童・生徒が被害に遭っており、これに対し文部科学省は、"都心の学校を一時的に閉鎖し、保護者のもとに帰すこととし、今授業を行なっている学校はその授業で切り上げ、警視庁と情報を共有していく"と発表しています。
また、警視庁からは"応援要請を送り、万全の状態で捜索に取り掛かる"と述べています。
行方が分からなくなった方は、以下の通りです。行方不明の方に関しての情報がありましたら、こちらの番号へ情報提示をお願いします。
では、情報が入り次第、お伝えしていきます…』
「50000件?嘘だろ…」「そんなにたくさん…」
あたしも含めて、ほとんどの人が愕然とした表情を浮かべていた。先生は、弾かれたように立ち上がり、
「授業はまだ始まってない。これから全校放送で帰るように言うから、お前らは帰る準備しとけ。1人で帰ることは、くれぐれも無いように」
そう言って先生が教室を出ると、それぞれがそれぞれの不安を口にし始め、それはやがて恐怖故の叫びに変わった。あたしは、これから何が起こるか分からない不透明な先の事に、ただただ怖さを感じて何も言えなかった。
夜になり、バースデーケーキを食べたりしたけど、嬉しい気持ちよりかは怖さが優っていた。それはみんなも感じていたらしく、誕生日パーティーにしてはかなり控えめだと思った。
パーティーはお開きになり、自分の部屋で寝る準備を終え、新たにもらったリンそっくりの人形を窓辺に置いてみた。でもなんか気になって、自分の枕元に置いてみると、しっくりくる感じがした。それに満足して、あたしはその人形をちょっと触ってみた。普通の人形の感触だな、なんて思った後、あたしの意識は深いところに落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます