異世界の竜の巫女
のろい猫
異世界の竜の巫女
高校の校庭。日差しがいつもより強い。校長先生が朝礼台の上に立ち、長々と挨拶をしている。一向に終わる気配が無い。
『…で、あるからして、君達の…』
挨拶が途切れ途切れに聞こえる。眩暈がし、視界がぼやける。そこから先は何も覚えていない。
眼をさますと僕は石台の上に寝かされている。石の壁、石柱が見える。ここは病院なんだろうか?起き上がると、少女がじっと僕の方を見つめている。瞬きをして彼女を見る。白いローブを身に纏っている。とても看護婦さんには見えない。でも、とても可愛らしい。
『あ…』
少女は首を横に振る。
『えっと…』
『竜人様。お気づきになられたのですね。私はこの世界のこの竜の神殿の竜の巫女シスカと申します』
僕はシスカの顔を見つめる。
『なんで僕の名前を。それにこの世界って…』
『ここはあなたの住んでいた世界ではありません。あなたはこの世界に転生したのです。世界の崩壊を目論む竜を倒す為に。私はあなたの転生のお手伝いをさせて頂きました』
僕は思わず立ち上がる。
『ちょっと、待ってよ。嫌だよ!そんな凶悪な竜と戦うなんて!何のとりえもない高校生なのに!元の世界に帰してよ!』
僕の顔を見つめ、一瞬寂しそうな表情を見せるシスカ。
『転生ができるなら元の世界にも…』
シスカは首を横に振る。
『いえ』
顔を上げるシスカ。その視線の先の巨大な水晶玉には病院のベットで寝ている僕。横で険しい顔をした医者に看護婦。父と母が泣いている場面が映っている。
『あなたは、もう…』
水晶を見て肩の力が抜ける。僕はもう…。俯く僕の眼にシスカの顔が映る。彼女は立ち上がり、僕を抱きしめてくれた。
夜。竜の神殿でシスカと共に食事をとる。シスカと向かい合って座る。食卓には銀の皿に乗せられた薬草の練り込んであるパンとスープにグラスに注がれた聖水。中央には果物がふんだんに並べられている。
『…シスカさん。僕、本当に竜を倒せるんでしょうか?』
『竜は異界人にしか倒す事はできません』
顔を上げ、シスカを見つめる。
『でも、僕は本当に何のとりえもない…』
『そうですね。でも大丈夫です。儀式を受ければ全ての能力は飛躍的にあがります』
『儀式…それは?危険なやつですか?難しいものですか?』
首を横に振るシスカ。
『いえ、竜の巫女とまぐわう事で飛躍的に能力があがります』
『ま、まぐわう!!』
顔が真っ赤になる。
『どうしたんですか?』
『まぐわうって…そ、そのs…』
顔を上げると、白いローブを脱ぎ、裸になっているシスカ。心臓の鼓動が早くなり、体が熱くなり、思わず顔を背ける。シスカは僕の隣に来る。
『…私の事、お嫌いですか?』
『そんな事…。でも、これは準備というか…』
振り返る僕の唇にシスカが唇を合わせ、舌を絡める。
『んっ…』
可愛らしい眼。愛くるしい表情。彼女のなすがままにされてしまう。僕の上に乗り、腰を激しくふるシスカ。
『好きっ!大好き!竜人様好きっ!』
握っている手からはシスカの温もりが伝わり、シスカが僕を温かく包み込む。我慢できなかった。
『僕、もうっ』
腰を力強く押し付けるシスカ。
『大好きっ!』
翌日。装備を渡され、シスカに案内され竜の住む洞窟へ。剣で木々を切り払いながら森の獣道を進む。
『どうしてこんなところを進むんですか?街や村は…』
『………それは、この世界に住む人々の大半は竜に洗脳されてしまっているからです』
『そんなに竜の浸食が…』
『先を急ぎましょう』
早足になるシスカの後をついていく。木々の間から集落が見える。駆けまわる子ども達や、談笑する商人。普通の日常風景だ。
『シスカさん。あそこに街が…』
『…無視してください』
『でも普通の』
『そう見えているだけです。竜の陰謀に気付く私達の様な人がいけば襲われて殺されてしまいます』
もう一度街の風景を見る。暫く行くと、大きな山の麓に洞窟が見える。シスカはそこを指さす。
『あそこが竜の洞窟です。この時間なら竜は寝ています。いいですか、竜の脳を狙ってください』
僕はシスカの顔を見て頷く。
洞窟の中では竜が吐息を立てて寝ている。忍び足でシスカとともに竜に近づき、竜の頭に登ると脳天に剣を突き刺す。大きな悲鳴を上げる竜。転がり落ちる僕をシスカが受け止める。竜は眼を開き、僕達を睨む。
『シスカ!お前は!』
胸に手を当て、竜から目をそらすシスカ。竜は口から血を吐いて倒れる。大きな振動が起こる。今いる空間が粒状になり、徐々に崩れ去って行く。
『これはどういう…』
うろたえる僕を映す竜の眼。
『…異界人よ!お前は、その女に…』
粒子になり徐々に消えていく竜。崩れていく世界を見回し、シスカの方を向く。
『これはどういうことだ。竜は世界を崩壊させる陰謀を張り巡らしていたんじゃないのか!どういうことだ!答えろ!シスカ!!!』
俯くシスカ。
『あなたの事をずっと見ていた。あなたとずっと一緒にいたいと思った』
『えっ…』
『はじめから竜の陰謀なんて無いの…。あなたをずっと好きだったから。だから』
シスカは顔を上げ微笑む。
『これでず~っと一緒にいれるね。この世界が滅んでも竜の巫女と異界人は残るの』
シスカの顔を見て、言葉を聞いてなぜ、彼女が見ず知らずの僕を好きになったのか、あんなに乱れたのか、よくわかる。彼女はあの巨大な水晶でずっと僕は見ていたからだ。だとしたら…。
『シスカ…さん…もしかして、君は僕を殺したのか?』
視線を逸らし、ゆっくりと頷くシスカ。
僕は
1.眼の前のシスカを見て憎しみが込み上げてきた。
第2話の異世界の竜の巫女の最後で選択肢1.を選んだ場合へ
2.でもたまらなく愛おしい。
第3話の異世界の竜の巫女の最後で選択肢2.を選んだ場合へ
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