彼女の後ろで、僕は。

前田 宏

プロローグ

僕は昔から、音楽が好きだった。

父が趣味でバンドを組んでいたこともあり、曲作りを手伝ったり、スタジオに連れて行ってもらって一緒に歌わせてもらったりしていた。


しかし小学五年生の時、親父が事故で死んだ。

スタジオから車で帰る途中、信号無視をしたトラックに衝突され、即死だった。

当時の事はあまり覚えていないが、葬式で泣きじゃくる母と、父のバンドの曲が流れていた事は鮮明に覚えている。

僕も、父が居なくなった悲しみを思い出さないために、音楽ともサヨナラした。


三年後の中学二年生の時、携帯を買ってもらった僕は嬉しくて、ずっとネットを見たり、ゲームで遊んだりしていた。


そんなある日、僕は彼女に出会った。


父が死んで以来、出来るだけ音楽を聴かないようにしていた僕だったが、その日は気分が乗って、動画サイトで少しだけ曲を聴いていた。

そのサイトの関連動画で見つけた一人の少女に目も、耳も、心も奪われた。


彼女は外国の少女だった。

年齢は同じくらいで綺麗な金色の長い髪、青い目をしていた。

歌は何語か分からなかったが、学校の授業で英語をやっていたので英語ではないと思った。


僕は思った。

彼女と音楽がしたい、と。

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