第78話
「今日から私が預かることになったミレイ・フィンスさんよ」
「宜しく、お願いします」
ある日、学園にあるジャネットの受け持つ生徒にミレイが加わることになった。
ミレイは通常の教室に所属していたのだが、他種族のエルフであることで孤立してしまっていた。
ソフィアとココナの2人と仲良くなったことは、クエストを一緒に受けている姿を見た教職員から学園側に情報は広がり、ジャネットが預かると進言をしたようだ。
「フィンスさんは勉強も出来て、自分のギフトについては知っているようだから、私からはあまり教えることは無さそうね」
「いえ、その、戦い方とか、教えてもらいたいです」
「んー、わかったわ。それじゃあ一緒に戦い方考えてみましょうか」
「宜しく、お願いします」
ミレイは礼儀正しく深く頭を下げた。
こうして、ミレイが正式にクラスの仲間になるのだった。
☆ ☆ ☆
「いき、ます!」
ミレイの杖からアクアショットならぬ、アイスショットは対戦相手であるココナに向かって放たれた。
ココナは身体強化をして、アイスショットをギリギリで避けながら、ミレイに近付こうと前進する。
ココナは見事にアイスショットを潜り抜け、ミレイの前に出る。
ミレイはここで何かの魔法で対処しなければ、ココナの攻撃を受けてしまうだろう。
「もらったぁ!!」
「アクアウォール!」
「ふぎゃあ!!」
ココナは魔法の発動が無いかと思っていたのか、素直に突っ込んだ。
しかし、ミレイはココナの動きを見切り、ギリギリのところでアクアウォール、改めてアイスウォールを発動した。
結果、ココナは勢いを付けたまま氷の壁に激突してしまった。
「い、痛そう」
「にゃあ」
ソフィアと俺は2人が戦っているのを観戦中だ。
審判はジャネットが行っているから、ヤバそうなら手を出すだろう。
「いたたた………」
ココナが顔を押さえながら、氷の壁から離れる。
ミレイはというと、すでにココナから離れ、自分が戦いやすい位置まで距離を開けていた。
「もう!次は引っ掛からないよ!ふぎゃっ!!」
ココナは勢いを付けて走りだそうとした瞬間に転けた。
「ココナ………足下気付こうよ」
「にゃう」
ソフィアの言葉に俺も同意した。
ミレイはアクアフィールドを密かに唱えていた。ミレイのギフト『氷結』により、水のフィールドは凍った地面になっていたのだ。
「こんなもの!」
ココナはウィンドブーツを起動し、地面に足を付けないようして動き始める。
そして、空中からミレイに向かって攻撃を仕掛ける。
「アクアレイン」
雨を降らす魔法なのだが、ミレイのギフトで雨でなく大粒の雹が辺りに降り注いでくる。
「いたっ!いたたっ!ふぎゃっ!!」
雹が降る中、空を跳んでいたココナはバランスを崩し、地面に潰れるようにして落ちた。
「ま、まだまだだよ!」
「えい」
倒れるココナに向かい、ミレイが持っている杖で頭をポコンと叩いた。
ココナはそれでパタリと動かなくなった。
「そこまで!ミールさん」
ジャネットは試合の終了の合図を出した。ジャネットはソフィアに視線をやり、ココナに治癒魔法を掛けるように促す。
ソフィアはココナにヒールを掛け始めると、ココナはすぐに気が付いた。
「大丈夫?」
「う、うん。なんかミレイに遊ばれた気がする」
「それはその………気のせいじゃない?」
確かに見ていた感じ、ミレイに遊ばれていたように見える。
そこにミレイ本人がやってくる。
「・・・ココナ、まっすぐだから、読みやすい」
「まっすぐ?」
「まぁ、それがココナの良いところでもあるんだけど」
「うん。それはわかる」
「ねぇ!どういうこと?まっすぐって何がまっすぐなの?」
ソフィアの言葉にミレイは頷く。しかし、当の本人であるココナはわかっていなかった。
☆ ☆ ☆
「違うわ。もっとしっかり放出した魔力を使い切る。もしくはしっかりと魔力を絶ちきってから、次の魔法に行くのよ」
「は、はい!」
ソフィアはジャネットから連続で別属性の魔法を使うための魔力の属性を切り替える練習をしていた。
俺が教えるのもいいが、ジャネットにもたまには先生らしいことをやらせなければならないしな。
「ほら、また魔力の残滓が残ってるわよ」
その後もソフィアの魔力制御の特訓は続いた。
ソフィアが特訓している間、ココナとミレイはソフィアの姿を見ながら休憩をしていた。
「ミレイはあの特訓しないでいいの?」
「ん、私はソフィアと違って、1つの属性しか使えないから」
「ふーん」
ミレイの言葉に頷きながらソフィアを見る。
「ソフィアは本当に凄い。あれだけの色々な種類の魔力を持ってる」
珍しくミレイが少し饒舌になっていた。
「エルフ族は魔力多いんだよね?エルフにはいないの?」
「2つか3つ、複数の属性持ってて強い人はいる。でもソフィアと比べたらドラゴンと虫を比べるようなもの。ソフィアみたいに全属性上級魔法を使える人は他に知らない」
「そ、そんなにすごいんだ」
ココナは改めてソフィアの凄さに驚きながらも、特訓に励む親友を見ていた。
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