第57話
「え、あんた達がかい?」
「はい。これでもレジスタンス教育機関学校の生徒なんです。私達」
「けどねぇ・・・」
女将さんにそう言うが、見た目は可愛らしい女の子3人だ。
女将さんはそんな3人に頼もうか悩んでいるようだ。
「あんたはいいのかい?」
女将さんは迷った挙げ句、グランに聞き始めた。まぁ確かにこの中では保護者に見えるわな。
「まぁ、そっちのちっちゃな嬢ちゃんはわからんが、こっちの2人の嬢ちゃんは強いからいいんじゃねぇか?」
「・・・ちっちゃい」
グランのさりげない言葉にミレイは少し傷付いていた。確かにミレイの背丈は145cmはないぐらいだ。子供に見られてもおかしくはない。
「大丈夫です。ミレイさんも強いですから」
ソフィアがそう言うと、女将さんは観念したのか両手を上げた。
「わかったよ。それならあんた達に頼むよ。だけど怪我だけには注意するんだよ」
この日は外も暗いので、翌日に盗賊が出る道に向かうことになった。
☆ ☆ ☆
翌日、俺達は何食わぬ顔でグランの馬車に乗り、例の盗賊が出る街道を進んでいた。
「今日もいい天気だね」
「そうですね」
「う~~~・・・」
ソフィアとミレイは景色を楽しんでいたが、ココナは死にそうになっていた。
(・・・ココナのやつ、こんなんで戦えるのか?)
窓からは海からの潮風が馬車内に舞い込んできて、差し込んでくる陽射しも暖かい。ソフィアの太ももの上は俺の絶好の昼寝場所となっていた。
「待ちなっ!!」
そんな気持ちいい時間が唐突に終わりを告げる。外から荒っぽい声が聞こえてきた。
その声に驚いた馬は途端に止まり、馬車は急停止してしまう。
「「きゃっ!?」」
「あ~う~・・・」
可愛らしく驚きの声を上げ、ソフィアとミレイは座席から落ちてお尻を打った。俺もソフィアと一緒に座席から落ちてしまう。ココナはココナで陸に打ち上げられた魚のように跳ねては転がっていた。
「いたたたた・・・今の声って」
「と、盗賊、です」
「うっ・・・もう・・・だめ」
なんか戦う前から駄目なやつがいた。
そんなココナを放って置き、俺も窓の外を見てみると、盗賊らしき人間が20人程で馬車を囲んでいた。
「俺の馬車になんか用か?」
グランは威圧するように盗賊のリーダーらしき人に聞いた。
「積み荷と雌ガキを置いていけ。そうすれば馬車は壊さないでやるよ」
どうやらソフィア達が乗っていることにも気が付いているようだ。恐らく村を出発するところを見られていたのだろう。
「お前ら、俺の馬車を襲わない方がいいぞ」
「はっ!!怖じ気づいたか?そんなら」
「違う。まぁ、やれるならやってみるといいさ」
グランは御者台の脇にある大剣を手に取る。それが盗賊のリーダーを刺激したようで。
「お前1人で守れるわけがねぇだろっ!!お前らっ!!やっちまえっ!!」
盗賊のリーダーは下っ端達に命令を出した。
盗賊達は命令に従い、全員で馬車に襲い掛かってくる。
「エアロハンマー・ダブル!!」
「アクアウォール!!」
馬車の荷台の前方、グランの背後からソフィアとその肩に乗った俺が飛び出し、前方にいるリーダーを残すように前側半分を左右にエアロハンマーをそれぞれ放つ。風の槌は容赦無く盗賊達を吹っ飛ばした。
残った後方は、ミレイがアクアウォールを放ち、ギフト『氷結』により氷の壁を出現さした。止まりきれなかった盗賊達は氷の壁にそのまま衝突し、倒れていく。
「な・・・な・・・なっ!?」
盗賊のリーダーは何が起きたか解らない顔をしている。
「な?襲わない方がよかっただろ?」
「く、くそっ!!」
グランがそう言うと、盗賊のリーダーは踵を返して逃げようとする。
「ビットフォール!!」
「うわあぁぁぁぁ・・・・」
ビットフォールは落とし穴を作る地属性魔法だ。
盗賊のリーダーはソフィアのビットフォールで作られた穴にまっ逆さまになり落ちていった。
そして、やたら時間を置いて水の音が聞こえてきた。
「・・・・ちょっと深過ぎないか?」
「あはは・・・やり過ぎちゃいました」
どうやら深くし過ぎて、海面と同じ高さまで掘ってしまったようだ。
流石に引っ張り上げることは出来なかったので、ミレイのアクアウォールで持ち上げてもらった。
こうして盗賊達は全員捕まえることが出来たのだった。
☆ ☆ ☆
「ほ、本当に捕まえて来たんだね」
盗賊達を見ると女将さんは顔を引き攣らせていた。
盗賊達から武器を取り上げ、縄で全員縛り上げてから、グランが引きずって村まで連れてきた。
馬車はミレイが馬を扱えたので、代わりに動かしてくれた。
「取り敢えずこいつらは村の詰所に引き渡しておくな」
グランはそう言って盗賊達を連れていった。
「ね!ココナ達凄いでしょ!!」
「・・・え?こ、ココナさんは何も」
「ここは言わない方がいいよ」
ソフィアはミレイの肩に手を置き、そっと声を掛けた。
「ああ、頼んで正解だったよ。ありがとねぇ。あ、そうだ」
女将さんはそう言うと、宿屋の奥の方へと入っていった。
「これ持っていき」
「これは?」
ココナは何かが入った小袋を渡された。音が金属ではないので、お金ではないようだが。
「この辺りの海で採れる海鳴りの石と呼ばれる幸運を呼ぶお守りにしてるもんさ。数は少ないけど、お守りとしては十分だ」
ココナが袋の中から取り出したのは、綺麗な蒼色をした石3個だ。ソフィアとミレイもココナから1つずつ貰い、その石の綺麗さに目を輝かせていた。
(・・・・・・どっかで見たような石だな)
ソフィアの肩から見ていた俺はそんの風に思った。どこで見たかは思い出せないけど、何かに使ったような記憶があった。
「ほら、リアン。綺麗だね」
ソフィアは俺が見えやすいように近くに持ってきてくれた。
「にゃあ」
一応返事はしておいたが、俺は海鳴りの石をどこで見たかを思い出すことでいっぱいだ。だが、結局ここでは思い出すことはなかった。
そして、グランが戻ってきて、俺達は再びこの村を出発するのだった。
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