第42話
ソフィアとグランは突然現れたロングウェーブの薄ピンク色の髪をしたゴスロリ服の女性を見て呆然としていた。
森の中から現れるにはあまりにも予想外過ぎたからだ。
「あら?あなた達は・・・」
だが、女性はそんなことを気にもせずに、ソフィア達に気が付き、近くまでやってくる。
「あ、あの、ありがとうございました」
「え?突然何を」
女性は俺達を助けたという認識は無いようだ。戸惑った顔をしている。
「いやぁ、俺達はアンデッドに襲われたんだ。苦戦しているところ、あんたの魔法で助けてもらったというわけだ」
グランが簡単に状況を説明した。女性は納得がいったのか頬を綻ばせた。
「そうでしたの。わたくしは自分に降りかかる火の粉を払っただけのつもりでしたが、人助けが出来たのならば、それは良かったですわ」
女性は話し方がお嬢様っぽいところはあるが、性格は良さそうな感じだ。少し頬が赤くなっているところを見ると、照れているように見える。
「申し遅れました。わたくし、カリーナ・メルエムと申します。訳あって1人旅をしていますの」
「俺はグランだ。そこの馬車の御者をしている」
「カリーナさんですね。私はソフィア・ミールといいます。レジスタンス教育機関の学生です。後、馬車の中にココナっていう友達も乗ってます」
「そう・・・よろしくお願いいたしますね。それと・・・その、わたくしも助けて頂きたいのですが」
カリーナは少し恥ずかしそうに目を逸らしながら言う。
それより一瞬だが、ソフィアを見る目が変わったような気がしたが、気のせいか?
「なんでしょうか?助けてもらいましたし、力になれるのならなりますよ」
「その・・・町に」
「町?」
「町に連れていってもらえませんか?道に迷ってしまって」
「えっと・・・私達もフォルティスの町へ向かっている最中ですので、ご一緒にどうですか?いいですよね?おじさん」
「おうよ!助けてくれた礼だ。金はいらねぇ」
「っ!ありがとうございます」
こうして、町までの道中にカリーナが同行することになった。
☆ ☆ ☆
「あの、さっきの魔法って光属性の攻撃魔法ですよね?」
「ええ、そうですわ」
町へ向けての移動中、馬車の中でソフィアはカリーナにアンデッドを倒した魔法について聞き始めた。
俺はソフィアの膝の上で休ませてもらいながら、2人の会話に耳を傾ける。
因みにココナは窓枠に干されている布団のような状態で寝ていいたりする。
「あの、会ったばかりで恐縮なのですが、光属性の攻撃魔法について教えて頂けませんか?」
「そうですわね・・・。わたくしのお願いを1つ聞いて頂けるのであれば、教えて上げてもいいですわよ。でもその前に、あなたには光属性の魔力はあるのですか?光属性の魔力は四属性の魔力と違って、適性のある方は少ないですのよ。旅の途中にわたくしに魔法を教えてほしいと言ってきた方も多くいましたが、誰1人攻撃魔法を使う程の魔力は持ち合わせていませんでしたの」
1人旅をしてきたからなのか、色んな人達を見てきたのだろう。
光属性の攻撃魔法は使用者が少ないので、僅かに光属性に適正があった者から教えてほしいと多く言われたのだろう。
「大丈夫です。一応シャイニングアローを今朝覚えましたから」
「覚えましたからって・・・え?誰に教えて頂いたんですの!?」
光属性の魔法は治癒魔法以外はあまり本に記されていない。
だから、基本的に誰かに教えてもらうしかないのだ。
「えっと・・・その」
ソフィアは視線を膝上で眠っている俺に向ける。俺も視線に気が付き、顔をあげる。
「・・・え?まさか、その黒猫・・・ですの?」
「い、いえ!こ、この子にはお手伝いをしてもらっただけで」
ソフィアは慌てて首を横に振って、否定する。
「というより先程から気になっていたのですが、その黒猫はあなたの?」
「は、はい、使い魔のリアンっていいます」
ソフィアが俺の紹介をしてくれる。
「そうなんですね。なかなか利口そうな猫ですわね」
「あ、ありがとうございます」
「っ!?」
ソフィアは俺が誉められたことが嬉しいようで、可愛く微笑んだ。
その顔を見て、カリーナの頬が赤く染まる。
「そ、それでカリーナさんのお願いって」
「カリーナで構いませんわ。わたくしもソフィアと呼ばせて頂きますが」
「わかりました、カリーナ。それでお願いって何ですか?」
「実はその・・・ちになって頂ければと思いまして」
「えっとなんて言ったんですか?」
(まさかそんなお願いでいいとはな)
俺には聞こえていたので、予想外に簡単な願いで驚いた。
「で、ですから!わたくしとお友達になって頂きたいんですの!」
カリーナは恥ずかしそうにしながら、そう叫んだ。
「は、はい、私でよければぜんぜん大丈夫ですよ。でもそれだけでいいんですか?」
「ええ!それで構いませんわ!そして後に恋人になって頂ければ!」
「そうですか。恋人に・・・って恋人っ!?」
「にゃっ!?」
流石の俺もその発言には驚いてしまった。
え、なに?カリーナってそっちの人?
「こ、恋人はちょっと」
「で、ですから最初はお友達からお願いしますわ!」
カリーナは興奮のあまり、ソフィアの両手を掴んできた。
「大丈夫ですわ!もしそうなっても痛くはしませんわ!」
「な、何がどうなって痛くなるんですか!?」
ソフィアの叫びは虚しく響くだけで、町に到着するまでの間、興奮するカリーナを落ち着かせるのに時間いっぱい使うのだった。
最終的には、友達になり、光属性の攻撃魔法を後日に教えてもらうことになった。
カリーナは町に到着すると、すぐに町の中へと消えていった。なんでも宿を探さないと寝る場所が無いそうなのだ。
まぁ、フォルティスの町は大きいし、宿はどこかしらあるだろう。
ソフィアとまだ少しふらつきながら歩くココナは、クエストの受付嬢のセリカのところに赴き、今回のランバード討伐の報告をするのだった。
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