第20話

 俺はウェイトレス姿になったソフィアの肩に乗る。


(っ!?こ、これは!!?)


 肩の上からソフィアの胸を覗き込むと、凄い光景が広がっていた。


 ブラジャーをしていないから、歩くとぷるんぷるんと揺れる胸。

 そして、服の隙間から胸の先端が俺の位置からだと見え隠れしている。


(・・・これ、客の前で前屈みになったら不味いんじゃないか?いや、でも俺の位置からしか見えないのか?)


 ソフィアとココナはディケイルからどういう風に喫茶店を回すか聞いていると、お客がやって来た。


(って!もう開店してるのか!?)


 俺はその事実に驚いていた。


「いらっしゃいませ」

「い、いらっしゃいませ」


 ココナは堂々と振る舞ったが、ソフィアは緊張か照れなのか、硬くなっていた。


 ココナが最初にお客の案内をする。

 ソフィアはその間に水の用意をするようだ。


 ディケイルはというと、カウンターの中に入り、可愛らしいピンク色のエプロンを着けて、料理をする準備をしていた。


(って!お前が料理すんのかよ!!)


 まさかの事実に俺はまたツッコミを入れてしまう。


「では注文がお決まりになりましたらお呼び下さい」


 ソフィアは水を置いて、そう言い残すと、カウンターの方に移動した。


「うぅ・・・リアン、見えたりしてないよね?」


 ソフィアは俺にそう聞いてくる。

 俺の位置からはしっかりと見えているが、反応を見る限り客の位置からなら大丈夫だろう。


 この後も数人のお客がやってきたが、問題なくソフィアとココナは接客を続けていた。


 だが、俺には気になることが1つあった。


 注文を受けたソフィアがディケイルに知らせる際に、ディケイルはやたらソフィアの胸元を見ているのだ。


 ソフィアも視線に気付いているのか、少し頬を赤くしている。


(このエロ親父め)


 そこで俺が行動することに決める。


 ソフィア達が客から取って書いた伝票。

 俺はソフィアの伝票を奪い取り、ディケイルの場所に持っていったのだ。


「ほ、ほう。出来た使い魔だな」

「あ、ありがとうございます」


 ソフィアは少し離れた位置からお礼を言った。


 どうやら俺の行動はお客からも称賛され、1つの芸と認識されたようだ。


 ま、ディケイルは残念そうだったが。


 それからは俺の行動はソフィアの近辺警護になった。


 男性客はソフィアのスカートを覗き込もうとする者も数人おり、その度に俺はその男性客に威嚇するようにして、ソフィアに知らせた。


 他にも注文を取っているソフィアの後ろから胸元を覗き込もうとして立つ客まで出る始末だ。

 俺はソフィアの肩に乗り、また威嚇をする。


 その度にソフィアは俺にお礼を小さな声で言ってきた。


「ありがとね。リアン」


 初日はこうして、大きな問題もなく無事に終わっていった。



 ☆     ☆     ☆



「疲れた~」


 ソフィアは自分の部屋に着くなり、ベッドに倒れ込んだ。


 ソフィアの肩に乗っていた俺は倒れる寸前でベッドの上に着地する。


 因みに夕飯はディケイルのお手製料理を食べてきている。

 俺もソフィアから分けてもらったが、意外にも美味しかったのが癪だ。


「でも接客の仕事・・・疲れたけど楽しかったなぁ」

「にゃあ」

「うん、リアンもお疲れ様」


 ソフィアは俺の頭を撫でながら労ってくれる。

 何だか眠くなってきたな。


「あ、そうだ。あのウェイトレスの服でも見えないブラジャー探さなきゃ」


 ソフィアは立ち上がり下着が入っているタンスを漁り始める。


「ん~・・・似たようなのが多いんだよねぇ」


 しばらくの間漁っていると、1つのブラジャーを取り出す。


「リアン、これ見えないかな?」

「にゃ?」


 半分寝かけていた俺は目を開けて、ソフィアの方を向く。


 ソフィアは上半身裸になり、ブラジャーを手にして、胸に当てていた。


 確かにいつもより胸を覆う面積は小さいブラジャーなんだが、あのウェイトレスの服を考えると微妙なところだ。


「・・・にゃー」

「うーん、やっぱり微妙なところだよね」


 本人もそれがわかっているらしく、悩んでいるようだ。


「ま、明日はこれ着けていこ。リアン、お風呂入るよ」

「にゃっ!?」


 ソフィアはそのままブラジャーをベッドに投げ捨て、上半身裸のまま俺を抱き抱えた。


「今日は服も後でいいや」

「にゃっ!?」


 ソフィアが疲れたからなのか、色々となげやりになっている。


 風呂の後、いつも俺の身体を拭いて貰う時は最低でもパンツを穿いてくれていたソフィアだったが、今日は完全な裸のまま拭いてきたのだった。

 俺はもちろん目を閉じて、その場をやり過ごしていた。


 あ、寝るときはパジャマを着ていたぞ。



 ☆     ☆     ☆



 ソフィア達がこの店で働きだして3日目。

 予定では今日まで働くことになっている。


 ソフィア達も初日よりは動きは良くなり、ウェイトレス姿も様になってきていた。


「ソフィア、おっぱい大丈夫?」


 ココナがお客がいないときにそんなことを聞いてきた。


「え、う、うん。この胸のところの布が柔らかい素材だから何とか」

「ならいいけど・・・あ、いらっしゃいませ」


 実は2日目に着けてきたブラジャーも普通に見えてしまっていたのだ。


 でも、このためだけに新しくブラジャーを買うのもどうかと考え、結局はノーブラのまま接客をしている。


(でも、男性客からはノーブラだとばれている気がすんだよな)


 ソフィアの胸の先端が服に少し形を浮き上がらせている時があるのだ。


(・・・・・・ん?)


 俺は今日もソフィアの肩の上で警護をしていた。

 すると、悪意のような気配を感じた。


 ディケイルの方を見ると、料理をしながら客の方に視線を泳がせている。


(こういうところは流石だな)


 恐らく悪意を向けられているのはソフィアだ。


「きゃ」

「おっと、ごめんよ」


 ソフィアは水を運んでいる最中に、だと男性客にぶつかってしまった。


(今の客・・・不自然な動きだったな)


 俺が席に戻る男性客を注視していると。


「ソ、ソフィア!一旦下がって!」

「え?」

「胸!」

「・・・っ!?」


 ソフィアの持っていた水が零れ、胸元を濡らしていた。


 ソフィアはノーブラだ。


 結果、ソフィアの胸は服が透けて見えていたのだ。


 先程ぶつかった男性客はにやにやしながら、こちらを見ていた。


「し、失礼しました!」


 ソフィアは胸を隠して、慌ててバックヤードに戻って行った。



 ☆     ☆     ☆



「ソフィア・ミール、入って大丈夫か?」

「は、はい!大丈夫です」


 ソフィアが更衣室で着替え終わると、ディケイルが入ってきた。


「あの不埒者には制裁を加えておいた。安心して業務に戻っていいぞ」

「あ、ありがとうございます」

「用件はそれだけだ」


 ディケイルはそう言うとすぐに店の方へ戻っていった。


「・・・いい人なのかな」


(変態だけどな)


 ソフィアは怖い人と認識が強かったから、そういう風に見えたのかも知れないが、今だって、ソフィアの胸元をガン見していたからな。


 こうして少し問題もあったが、その後は何事も無く、仕事は無事に終わっていった。

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