第13話

 初めてのクエストは成功し、報酬金が渡された。

 しかも、ウッドラビットを5羽も狩ったので、報酬も上乗せもしてくれた。


 グラン達を襲っていたグリズリーもソフィアが狩ったことが学生証を通してわかり、更に報酬が上乗せされた。


 流石に全部の分け前を貰うのが心苦しかったソフィアは後日、グラン達のところに赴き、報酬金を分けようとした。


「おいおい、嬢ちゃんがあいつを倒したんだ。そいつは嬢ちゃんの金だ」

「いえ、おじさんが身を張って助けてくれたから倒せたんです。だからどうか受け取って下さい」


 ソフィアがそう頼み込むと、グランさんは頭を掻きながら渋々と受け取った。


「そんならこいつは今後の俺の馬車の利用料金の前払いにさせてもらうぜ」

「いえ、そういうわけには」

「いいからこれでいいんだよ。ほら、客が来たから行った行った。お客さん、どちらまで行きます?」


 流石に商売の邪魔をするのは迷惑なので、ソフィアは引き下がることにした。


「これでいいのかな?」

「ま、受け取って貰えたからいいんじゃない?」


 ソフィアはとりあえずそう思っておくことにした。


 それから一月程が経ち、クエストも順調にこなしていった。


 そして、ソフィアも少しだが、俺の補助無しで魔法の威力をあげることに成功を始めた。


 そして、休日の前日。


「ソフィア!今日は買い物に行こう!」

「え、うん。いいけど」

「やったぁ!ありがと!」


 ジャネットの授業が終わった途端にココナがソフィアにそう言ってきた。


「行くのはいいけど、帰りはあまり遅くならないようにね」

「はい!気を付けます!」


 ジャネットが注意をすると、ココナはこれでもかっていいくらいの良い返事をする。


「・・・ミールさん、本当にお願いね」

「はい、わかりました」

「あ、あれ?なんでココナの返事は無視されてるの」


 まぁ、こんなのやり取りも、いつもの会話と思えてくるな。


「で、何を買いに行くの?」

「下着!」

「下着?」

「うん!最近魔法ですぐぼろぼろになっちゃって」

「服はいいの?」

「制服が頑丈でそれは平気なんだ。だけど、下着はすぐにダメになっちゃって」


 まぁ、あれだけ派手に魔法で突っ込んだりしてればぼろぼろにはなるわな。ってちょっと待て。


(俺も一緒に女子の下着の買い物に行くのか?いやいや、流石にそれは・・・でも今はソフィアの使い魔なわけだし・・・)


 俺が悩んでいると。


「リアン、行くよ」

「・・・にゃあ」


(やっぱりこうなるか。ま、俺は何処か店の隅の辺りで寝てればいいか)


 この時、俺はそう考えていた。その考えが甘いことに気が付かないまま。



 ☆     ☆     ☆



 俺達はフォルティスの町の商店エリアに来ていた。


 ここは食べ物から服飾、武器防具等の店が固まっているエリアだ。

 なので、いろんな人が行き交っている。


 なので、俺は潰されないようにソフィアの肩の定位置に乗っていた。


「ソフィアは胸が大きくていいよね。最近も大きくなったんじゃない?」

「うっ」


 確かにソフィアの胸は成長している気がする。

 これに気付けたのはソフィアのパジャマのワンピースだ。


 俺は今もなお、3日に一度はソフィアが寝ている時に魔力制御の練習をしていた。

 本当は毎日やりたいのだが、ソフィアの下着事情からやめている。


 で、話を戻すが、最近ワンピースを捲り上げる位置が少し上がって来ているのだ。


 もしかすると身長も伸びているのかもしれないが、ワンピースから見える胸の谷間も大きくなっているような気がするのだ。


「やっぱりわかる?」

「うん!ココナも胸はもうちょっと欲しいけどなかなか・・・」


 ココナはどちらかというとスレンダーな体型だ。

 だからといって胸がないわけじゃない。

 ソフィアと比べると無いだけで、普通にある方だと俺は思う。


「ソフィアも下着買ったら?」

「うーん・・・そうしようかな」


 2人はクエストのおかげで、今は財布の中が潤っている。


「あ、あそこの店にいこうよ!」


 そこはちょっと高そうな女性の下着専門の店。

 俺が一生縁の無いだろう店だ。


「高くないかな?」

「大丈夫大丈夫。今お金あるし」


 俺はソフィアに乗ったまま、女性の下着専門店に入る。


 中に入ると、何人かの女性客が自分に似合いそうな下着を選んでいる姿がちらほら見られた。


(・・・あまり見ないようにしよう)


 俺はそれがモラルだと考えて、ソフィアの肩から降りて、店の入り口辺りに行こうとする。


「ん~・・・向こうに行こ!」

「う、うん。ってリアン、お店の中は私から離れちゃ駄目だよ」

「にゃう?(マジ?)」

「ほらこれ」

「・・・・・・・にゃう」


 俺がソフィアから降りようとしたら、捕まってそんなことを言われる。

 そして、店入り口に『使い魔やペットは離さず管理して下さい』とあった。


「ソフィア!こっちに可愛いのあるよ!」

「うん!ほらリアン、行くよ」

「・・・にゃう」


 俺が決めていたことは簡単に崩れ去るのだった。



 ☆     ☆     ☆



「どう・・・かな?変じゃない?」


 試着室の中でソフィアは上半身下着姿でココナの意見を聞いていた。


「ううん!可愛い!!胸はそのカップで大丈夫そうだね。ココナはどう?」

「うん、可愛いよ」

「だよね!」

「・・・・・・・・・」


 何故か試着室が殆ど埋まっており、2人で1つの試着室を使っている状況の中で、俺は試着室の中の片隅で目を閉じて耐えていた。


(目を開けるな俺!鏡でソフィアだけでなくココナのも見えてしまうぞ!)


 そう、試着室には姿見がある。


 それなのにソフィアもココナも上半身下着姿できゃっきゃっと騒いでいた。


「ふにゃっ!?」

「あ、ごめんね。リアン」


 俺の上に何かが降ってきた。

 それをソフィアが退けてくれる。

 どうやら降ってきたのはブラジャーのようだ。


「っ!?」


 その際に見てしまった。


 鏡越しではあるが、ソフィアとココナの上半身の裸姿を。

 どうやら試着を終え、着替えている最中のようだ。


(・・・・ココナは胸は小さめだが形は綺麗だ。ソフィアは言うまでもなく形も大きさも大変良い・・・ってなにまじまじ見てんだ俺!?)


 俺は慌てて目を閉じる。


「後は測ってもらってパンツを買えば終わりだね」

「うん」

「それじゃあ私呼んでくるよ」

「こ、ココナ!上!服着ないと!!」


 何事かと思い目を開けて見ると、ココナが上半身下着姿で試着室から出て、店員を呼びに行こうとする姿だった。


「大丈夫大丈夫。すぐ戻るから」

「そういう問題じゃ」


 ココナは本当にそのまま出ていってしまった。


「お客様!早くお戻り下さい!」


 すぐに店員の声が聞こえてくる。


「連れてきたよ」


 そして、当然のように店員と一緒に戻ってくる半裸のココナ。


「あの、その、友人が迷惑掛けたようで」

「い、いえ、えっと・・・測定でございますね?」

「うん!お願いします!」

「・・・本当にすみません」


 最後まで態度の変わらないココナと、ずっと申し訳なさそうにしているソフィアであった。


 そして、なんとか下着を買うという目的は達成したのだった。


 はぁ、やたら疲れたな。

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