最強魔法使いで先生になるはずの俺が教え子の使い魔に!?
雅國
第1章 運命の出会いと再会
最強魔法使いが使い魔に
第1話
この世界には魔法が存在する。
魔法は誰にでも使うことができ、この世界の生活の一部となっていた。
ある魔法は人々に暖かさを与えていた。
ある魔法は人々を潤す水を与えていた。
魔法は生活の一部として組み込まれ、日常で使用されるようになっていた。
だがその一方で、魔法による犯罪も存在していた。
ある魔法は人々を燃やし、ある魔法は人々を斬り裂き、ある魔法は国を滅亡させた。
魔法は誰にでも使えるこの世界の理であるため、この手の犯罪は消えなかった。
そんな中、魔法犯罪を許さない人々が世界各地で立ち上がり、いつしか大きな機関となった。
それが俺が所属している組織『レジスタンス』だ。
あらゆる魔法犯罪を対象として、時には魔獣と呼ばれる凶悪な化け物の討伐も行っている凄腕の魔法使い集団だ。
「リアン、出発するよ」
俺の目の前には学校の制服に身を包んだ少女がいる。
この少女はレジスタンスの教育機関学校に通う生徒だ。
少女は俺を呼び、俺は少女の肩に乗った。
俺が少女の肩に乗れる理由?
「にゃあ!」
「ふふ、今日もよろしくね」
だって、今の俺は黒猫なんだから。
☆ ☆ ☆
少し時間を遡る。
俺はある時から魔法の理論を研究する立場になり、前線にはあまり出ずに、裏方作業ばかりしていた。
理由は俺が攻撃魔法を使ってしまうと、その周辺を荒野にしてしまうからだ。
理由はこの世界にあるもう一つの魔法以外の特殊な理だ。
それが『ギフト』と呼ばれるものだ。
大勢の人々が暮らすこの世界で自分一つしかない特殊能力のようなものだ。
『ギフト』は同じものは存在しない。
全て個人個人で違うのだ。
そんな俺のギフトは『暴走』。
良くも悪くも、制御しているはずの魔法が超絶な威力・効果になってしまうものだ。
それが原因で以前、一つの広大な森を全焼させたこともある。
それ以降、本当に必要ない時以外、あまり出動しなくなった。
そして、暇な時間を持て余していた俺は、ある時から新たな魔法理論とやらを確立することに没頭してしまったのだ。
そんな俺、リアン・ユーベルは25歳である失敗を起こしてしまった。
ある日、前線に出ないのならレジスタンスの教育機関で講師でもしろ。という上からの命令で、俺はレジスタンスの教育機関がある魔法都市『フォルティス』にあるフォルティス教育機関学校の校舎にある研究室に引き籠っていた。
たまに講師をして、後は魔法の研究をするという理想の場所を手に入れていたのだ。
だが、そんなに上も甘くなくない。
俺に次に入る生徒の専任教師になるように言ってきた。
専任教師とは少数の生徒の担任になり、集中教育をする制度だ。
普通の学校のようなクラスもあるが、変わり種の『ギフト』を持つ生徒や、何かしらの問題があるが実力がありそうな生徒は馴染めずに辞めてしまう例もある。
そこで用意されたのが専任教師という制度だ。
それになれば俺はレジスタンスに居続けることができ、研究も続けていいとのことだった。
俺はその話にすぐに食いついた。
そして、次の生徒が来るまでに、魔法の研究を一段落させようと自棄になって、何日も徹夜で作業を進めていた。
そして
「よっしゃあ!!変身魔法の開発に成功したぞ!!」
俺は勢いよく立ち上がり、喜びの咆哮をあげる。
この世界の魔法は基本的に火、水、地、風の四属性と治癒魔法等がある光属性、呪いや召喚魔法等を得意とする闇属性の合計6個が存在する。
そして、俺が今開発した変身魔法のように、どの属性にも当てはまらない無属性というものもあると言われている。
言われているというのは、無属性の存在は曖昧で、無属性の魔法があまり確立されていないからだ。
そんな魔法の一つを確立出来た俺の喜びは、研究している身として壮絶なものだった。
「よし!早速魔法を」
俺は早速変身魔法を自分自身に掛けてみることにする。
この世界の魔法はイメージをして、魔法の種類に合わせて体内の魔力を制御し、魔法名を唱えることで確立する。
「トランス!」
魔法名を叫ぶと俺の身体は光に包まれる。
光が収まった場所には、黒い大型の犬がいた。
「わわん!わんわんわぉーん!!(やった!成功だー!)」
俺は言葉になら無い犬語で吠えた。
すると、また光に包まれる。
「わ、わぅ!?(な、なに!?)」
次に現れたのは鷲のような大きな鳥だ。
「クェ?クェクェクェ!?(え?暴走か!?)」
そしてまた光に包まれる。
「チュ!?チュチュチュー!?(なに!?今度はネズミだと!?)」
俺は何もしていないのに、魔法が勝手に発動して、姿を次々に変えていく。
「チュ、チュウチュウ・・・チュウチュ!(は、早く解除を・・・キャンセル!)」
・・・・・・・・・・
しかし、何も起こらなかった。
「チュ、チュチュっチュー!!(し、しまったー!)」
俺はここで重要なことに気が付く。
「チュウチュチュ、チュチュウチュチュウ・・・(動物では、発音出来ん・・・)」
俺はここまでの無茶が祟り、使った後のことを全くもって考えていなかったのだ。
解除の魔法は変身の魔法を開発した俺にしかわからない。
要するに、この魔法は解除ができないということだ。
俺はこうして、自分の研究室で1人で絶望を感じ、黄昏ていると。
「失礼します。リアン」
そこに1人女性が入ってきた。
彼女はジャネット・コルネリア。今年20歳になる長い赤髪と深紅の瞳が印象的なしっかり者の女性だ。
ジャネットには普段、俺の補佐みたいな仕事をしてもらっている。
専任教師としての副担任みたいなものもやってもらう予定だ。
「あら?リアンはお出掛けかしら。珍しいわね」
研究室に俺の姿がなかったから、珍しく思っているようだ。
確かに研究室に籠りがちなのは否定しないが。
「もう、リアンったら服も脱ぎ散らかして・・・」
ジャネットは俺が動物に変身した時に脱げてしまった服を見て、呆れながら拾おうとする。
「・・・・・・・・・」
俺はこちらに近付いてきたジャネットに目が釘付けになった。
(こいつ、黒のティーバックなんて穿いてんのかよ!)
俺は今ネズミだ。
ジャネットが近付いてきたら、下からスカートの中身が丸見えだった。
「チュ!?(なっ!?)」
ジャネットは俺の服を拾うためにしゃがみ込んだ。
結果、ジャネットの生のお尻が目の前にやってきた。
「ん?何かしら?変な声が聞こえたような・・・」
ジャネットは立ち上がり、辺りを見渡すと、足元にいる俺の存在に気が付いた。
「チュ、チュチュッチュ!(ジャ、ジャネット!)」
「・・・い」
俺は懸命にジャネットの名前を呼ぶ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
しかし、ジャネットは悲鳴を上げながら、部屋の隅まで逃げ出す。
「チュ、チュッチュチュチュ!(ま、待ってくれ!)」
俺はジャネットの名前を呼びながら追いかける。
「こ、来ないで!ふ、ふれ」
「チュ!?チュチュウ!!(ちょ!?それは!!)」
俺はジャネットの放ち始めた魔力で何をしようとしているのかに気が付き、逃げ出そうとする。
「フレアバースト!!」
「チュゥウウウウ!!!(ぎゃぁああああ!!!)」
俺はジャネットの放った火属性の高難度の爆発魔法により、部屋ごと吹き飛ばされてしまうのだった。
「チュウ・・・・・・」
ネズミで体重が軽かったのが幸いしたのか、建物の外に吹き飛ばされても死ぬことはなかった。
だが、俺は衝撃で気を失ってしまう。
そして、そのまま再び光に包まれる。
「こっちから爆発音がしたような・・・・あれ?」
そこに1人の少女が通り掛かる。
「・・・・・・・・」
そして、俺は少女の暖かな腕に抱き抱えられて、連れ去られてしまうのだった。
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