僕の愛する姉さんが男の娘でした。(#ぼく姉)
並木坂奈菜海
プロローグ 僕と姉さんの日常
「おはよう」
僕の1日は、姉さんの包み込むような優しい声で起こされるところから始まる。
目覚ましをちゃんとかけているので別にそんな必要は全くないのだが、姉さんはいつも目覚ましの時間に僕の部屋へやってくる。
もしも僕が寝坊したら大変だから、というのが理由らしい。
「今日はタッくんの好きなだし巻き卵だよ」
「姉さん、いつもありがとう」
「じゃあ、準備してくるね」
そう言い残して、姉さんは部屋を出ていく。
姉さんの残り香をぼんやりと感じつつ、遅れてリビングへ向かった。
******
キッチンに立つ姉さんを横目に、洗面所で支度をする。
食卓に戻ると、そこには完璧な和朝食があった。
木製の茶碗からはみそ汁の湯気が立ちのぼり、一息吸い込めば幸せな香りで胸がいっぱいになる。
エプロンを片付け、ポニーテールにしていた髪を少し整えてから姉さんも席につく。
「いただきます」
「いただきます」
まるで美術品のような姉さんの
だからいつも、姉さんが箸をつけるまで待っている。
いつもどおりの綺麗な手つきで魚を切り分け、茶碗に乗せて口へと運ぶ。
「……どうしたの?」
「いつも姉さんは綺麗だな、って」
「もう、朝からそういうこと言わないの」
そうやって頬を染めて恥じらう姉さんは、かわいい。ただただ、かわいい。
そんな姿を眺めながら、遅れて自分も箸をつけた。
******
再び部屋に戻り、制服に着替える。
そろそろ夏服にしたくなる季節だが、残念なことにまだお預け。
暦が夏になるまで待たなければならない。
いい加減サラリーマンもネクタイはしなくなるのに、一々締めるのが面倒だ。
だがしかし、女子も冬服はスカート以外僕ら男子と変わらない。
「支度できたー?」
下から姉さんの声が聞こえる。
「もうちょっと、大丈夫」
ちょっと声を張り上げて返事をする。
バッグを持って、少し急ぎ目に階段を降りると、玄関口で姉さんが待っていた。
「タッくん、ちょっと待って」
こんなところでネクタイをいじられていると、最早姉というよりも奥さんのように感じる。
しかし流石にキスはしない。
……僕としてはやってみてもいいのだけれど。
「はい、いってらっしゃい」
「いってきます」
ドアを開ければ、晴れ模様の青空。
ああしていつもお節介を焼いてくる姉さんのおかげで、それなりに日常が楽しく思える。
姉さんに出会えて、本当に良かった。
そんな姉さんは、実は男だ。
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