別れ方
ベタ惚れした相手がメンヘラだった──
非モテの俺にもモテ期が来たと勘違いしていた。人生には三度モテ期が訪れるなんていう言葉を真に受けて、熱烈なアタックに舞い上がってしまったのだ。しかも見た目は美人で巨乳ときたもんだ。これで浮かれない方がどうかしている。
モテない人生を歩んでいたので、最初は面食らってしまった。ネットで見たことのある遊びではないかと勘繰ったこともある。
しかし相手の真摯なアタックは偽物ではないとわかったら、その熱意と容姿に俺はやられてしまった。
楽しい毎日を過ごせるのかと期待に胸を膨らませ、ドキドキの初体験も済ますことができた。
24時間話していても飽きることはない。どんなときでも連絡が入るとすぐに応じるという日々だった。
気が付くと同棲していた。束縛すらも愛おしいと感じていたのだ──しばらくは。
友達と出かけたり飯を食ったりすることすら膨れっ面をするので宥めるのに時間がかかる。部屋はワンルームだったから、四六時中一緒に過ごすことに対して徐々に疲れが溜まってきた。
一人の時間も欲しいと懇願したこともある。それを受け入れてくれれば何も問題は起こらないのだが、許してはくれなかった。
次第に息苦しくなってくる。逃げるように大学で勉強をしたりしていた。
喧嘩をすればリストカットだなんだと騒ぎになるので、思い切って別れを告げようと決心した。
案の定、室内大騒動。手が付けられないのだ。
追い出すこともできないとなると引越ししかないのだが、自分名義で借りているから八方塞がりだった。もちろん不可能ではないが、手間と費用がかなりかかってしまう。貧乏学生にはあまりに辛い出費だ。
さらに、どういうわけか相手は同棲しているのをいいことに俺の通帳や印鑑まで握ってしまっている。家計まで管理されては、なけなしのお金を使って逃げることすら叶わない。
諦めの境地に達しかけていた俺を見る彼女は嬉しそうだった。
このままでは自分が壊れてしまう。生ける屍となってしまう──
別れを告げられないのならば強制的に別れてしまえばいい。
この世とあの世を自由に行き来することなどできないのだ。
そして俺は心に決めた。実行は今夜──
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