第18話 命張りました



「ぎゃぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!だずげでぇぇえぇえええ!!!」


「うるさいんですよ!ほら、来てますってば!もっと、もっと早く…もっと………早く走ってぇえ!!!!」


「あなた今どういう状況か解ってる!?俺に担がれてんだよ!!?いくら軽いとはいえ結構辛いんだからな!!」


「もっと早くぅ!あと傷が痛いんで、ゆっくり走って下さいぃ!」


「お前の言ってること、前後で矛盾してんだよぉーーーーーーーー!!!!!」



 ……………ベアッーーーーーー!!!



「「ぎゃぁああああああああああ!!!!デターーーーー!!!!」」



 なぜこうなったのか。



 時間は少し、遡る──────。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「あ、諦められない…………一体、なにを……」


 あぁ、やばいこの子。そんなことも解ってなかったのか、最初から……。うぅあ!胸がぁ、痛めつけられるぅ!!


「だから、こういう事だよ!………野良犬が飛び込んできてんじゃねえよ!コボウストレーーートぉおお!!」


 さっきと全く同じ動きしてるけど、技名は違うんだぜ!なんでって?……かっこいいから!


「そういうことですか………」


「おう、そういうことだ」


「……こんな時にでも、地に落ちたようなネーミングスキルを発動せずにはいられないという事ですね」


「いや、ちげえよ!?え、なに、格好付けて表した挙げ句、まさかの伝わってないパティーン!?俺超恥ずかしいよ!!」


 こういう奴には、直接言葉で言わねえと解んねえ奴か。けどなぁー、けどなぁー!今、それどころじゃないんだよねぇ。


「魔獣は不意打ちなら倒せないこともないが」


「正面から戦わないんですか、この意気地なし」


「今、分析中だからさぁ、邪魔しないでもらえる!!?今からシリアス展開になる予定が、狂いまくったよ!!」


 グルルルルルルルッ!


「-OH、ワタシハオイシクアリマセンヨ?ミノガシテクーダサイマセンカ?」


 グルルルルッ!ヴォウ!!


「デスヨネー」


 グシャッ


 飛びかかってきた魔獣は、軌道を90°変えて地面に叩き潰される。


 へっ?ク、クマさん……助けてくれ、た…?


 じ、実は良い熊なんじゃ………



 ………ベアッーーーーーーー!!!



「ぎゃあああ!!イリス捕まってろぉ!……ねぇ、色々とツッコんでいい!!?」


「あの熊、助けたんじゃなくて獲物を独り占めしたかったのですね」


「いや、そこじゃねぇし!!!逆にあれほどの異常さの中で、それをチョイスするお前に俺は感心したよ!!!」


 いや、あれ熊なの!?かなり強そうに見えるけど鳴き声で一気に冷静になれたわ!俺の恐怖心返せ!!


「と、とにかくだ!さっさとここから逃げるぞ」


 魔物たちから全力で逃げる。あれ、ちょっとイリスが大人しいような


「あなたに助けてもらうというのですか………あなたは、私に殺されかけたのですよ」


「あぁ、そうだ。殺されかけた、今でも右腕痛てぇよ、普段お家で布団被ってフルプレート装備だった俺がこう怪我すると特に痛いんだよ!?あとさ。──────」


 問いかけが来たときにスッと頭に浮かんだ。そう、ただ単にそう思った。


「今頃、真面目雰囲気出されても、もう俺乗れねえし!!」


 この娘ぇ、数分前にこのシリアスな空気断ち切っておいてぇー!!俺が思っていう以上に、イリスは結構マイペースというか鈍感というか、自分勝手というか……………。なんて奴だ!!


 でもね、今肩に担いでるんだけどすごく軽いんだよね。羽みたい。それに、肩から伝わる温かさと柔らかいものが…………。


「なに、鼻の下が延ばしてるんですか。イヤらしい」


「鬼畜な豚貴族を見るような目で俺を見るな!そこまで酷くねえよ!」


 うん、そこまでは酷くない!これは…そう、あれだ、思春期の男子にはちょっと刺激が強すぎるんですよ。だからこれは、一般的なはずだ。そ、そうだろ!?


「それはいいとして、これからどうするつもりなんです?」


「さらっと話題変えたな。結構真剣に考えてたのに」


「私の身体をそんな真剣に妄想してたんですか。……冗談でも引きます……」


「コータは考えることをヤメた………」


 だめだこいつ。会話が成り立たない。


 言葉のキャッチボールちゃんとできてないだろ!ゆるふわ優しく投げてる俺のボールを打ち返してるだろ!さっきからいいバッティングだわ!!


「俺はこの森に関して、塵レベルで知らないからな。道案内の程よろしく」


「では、早速行動開始です。この先に魔除けの結界があります。殺すのは後でしましょう」


「本人目の前にいるからね!?」


「あ、いたんですか」


「お前は今まで誰と話してたんだよぉーーーーー!!!!!」


 こいつマジで言ってんのか!?違うよな?でもでも、冗談でもこんな時にジョークなんて場違いにも程があるぞ。


 ズドォオオオンッ!ズドォオオオンッ!


「なんか追われてね?微妙に追いつかれてねえか!?」


「明らかに遅すぎです。もっと走って下さい。……そこ右です」


「だよね!だよね!俺遅いよね!あと、冷静な指示ありがとうございますぅ!!」


 なんか後ろの方ですごい音してるんですけどぉおおお!!あの、クマさん木薙ぎ倒してるじゃん!!すでに魔獣先輩追うの諦めてるよ!!


「熊が木を投げてきます!避けて下さい!」


「そんなの無理に決まってんだろーーーーーー!!!」


 ドガァァアアアアアアンッ!!


「ぎゃぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!だずげでぇぇえぇえええ!!!」


「うるさいんですよ!ほら、来てますってば!もっと、もっと早く…もっと………早く走ってぇえ!!!!」


「あなた今どういう状況か解ってる!?俺に担がれてんだよ!!?いくら軽いとはいえ結構辛いんだからな!!」


「もっと早くぅ!あと傷が痛いんで、ゆっくり走って下さいぃ!」


「お前の言ってること、前後で矛盾してんだよぉーーーーーーーー!!!!!」



 ……………ベアッーーーーーー!!!



「「ぎゃぁああああああああああ!!!!デターーーーー!!!!」」


 飛び出してきた熊は、腕を大きく振りかぶって────


「イリスさぁん!さっきの獣化もう一回できます!?」


「…………無理」


「なんてこった!!………ラスタ!!!」


 ベァアアア!!?


 やべえ……意識…飛びそう。闇雲に二回もうっちまったもんだからキツい。んで、このクマ、鳴き声全部ベアーー!!なのか………?


「意識をちゃんと持って下さい!!あなたは、私の脚なんですから!!」


「嫌な言われようだな!今の言葉で、復帰した俺どうかしてるよ!!」


 何とか時間は稼げたぜ。


「結界が見えてきました!」


「えっ!?マジぃ!?よっしゃ、これでたすか─────OH」


 なぜかって?そりゃあ結界の入り口の目の前に

 

 グルルルルルルルッ!


 が、いるからさ。ハハ、AHAHAHA。よし、引き返─────


 ベアーーーーーーー!!!


「ハハ……笑えねえー」


「笑ってるじゃないですか」


「こんな時でもブレねぇお前に感動したわ。今挟まれちゃってんだぜ」


「解ってます。もう、無理でしょうから。あなただけでも逃げたらいいじゃないですか。ここで囮にするために、私を運んできたのでしょう?」


「はっ?」


「私も最初から助けてもらおうだなんて、考えていませんでしたし…………」


 こいつ、諦めてるよ。ああ、ムカついてきた。そんな簡単に諦めるとかマジイラつく。逆に見捨てるっていう考えが俺にはなかったのに。


 俺はこんなとこで諦めねえ。考えろ、考えろ………。


「あ、思いついた」


「……………………………」


 これはあれだな……チェストォオオオ!!!しないといけないやつだ。


 イリスをその場でおろす


「……さぁ、早く逃げ──」


「さあ、わんこども来い!!───コボウストレート!!」


 うわ!犬どもこえええ!!コボウがなけりゃお漏らししてるとこだぜ。


「え………なんで…………」


「言っただろ!!俺はお前を諦められねえ、だから俺に守られてろって!!!…………くらえ!!ラスタァ!!!」


 あぁ、ヤバいこりゃだめだ。俺もいけると思ってたんだがな。倒れる………………このあとに、な!!


 地面に伏せているイリスを掴んで


「どぉぅらあああ!!!バストぉーーーーー!!!!!」


 結界のほう目掛けて思いっきり投げた。





「コータさん!!!!!!!」



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