≪未来視≫で一命を取り留めまくりました

不二宮ハヤト

プロローグ

第0話 今日、誕生日でした


――――あの日、俺は死んだ。

 といっても本当に死んだわけではない。


 だが、その日を境に俺を取り巻く環境も何もかも変わった。






※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


――――ピピッピピッピピッ。また地獄の日の始まりか、、、


「あぁ、朝か・・・ってもうこんな時間かよ!やべぇ母さんに怒られる!」


 いつも起きる時間よりも1時間近く遅れてしまった。

 そして朝の第一声が説教の心配なんだなっと我ながら少し笑ってしまった。


「んん、はぁ~、今日もいい天気で何よりだ。ってそんなことどうでもいい早く学校にいかないと」


 よし、準備できた。


 急いで階段を降り、台所に行くと最初に迎えてくれたのは妹だった。


「おはよう、妹よ。そしてこの前貸した本を返せ」


「おはようー、別にいいじゃん、だっておにいエッチな本しか読まないくせに」


「う、うるせぇ!」


 突然の発言にドキッっとした。心臓に悪いぞ。


(それに、なぜ俺のマイエンジェルたちの宝物子の場所を知っている。)


「わかるぞ康太、父さんも昔はよく読んでたぞ。今度何冊か貸そうか?」


「昔のだろぉ~、あ、でもちょっと興味が・・・って親父もからかうな!」


 親が子に向かって言う言葉がそれかよ。っと心の中で笑う。


「康太、起きるの遅いわよ!もう時間なんだから急ぎなさい!」


 そして最後には、俺の母さんにして我が梶馬家の番長という圧倒的支配者が相手なのだ。


 だが今日こそは――――。


「――――僕のお調子者!オタンコナス!テヘッ」


 どこかのマンガの女の子がやってそうな感じで言ってみたが、母さんの顔はより一層険しくなる。


「す、すいません。以後、気を付けます」


「よろしい」


 100戦以上やっているが未だに1回も勝ったことがない。まず、勝つビジョンが浮かばない。

 勝てるやつがいたら1日1時間はお祈りし、弟子入り志願したことだろう。

 怒ってばかりの母さんだが笑った時の顔は最高に美人だと親父も含め、友達に自慢していることは内緒だ。


 もちろん母さんだけではなく妹も親父もどちらも美女美男である。


 妹は小学校でよく男子から告白されると俺を見ながら自慢げに話していたり、成績の自慢も俺を見ながら話していた。

 あの時の顔はほど、妹に対して憎たらしいと思ったことはなかった。


 親父は公務員でもういい年のおじさんのくせに結構イケメンで、よく職場の若い女の人に食事に誘われているそうだ。

 当然母さんは浮気は許したことも許す気もない。


 母さんは美人なうえに一流大学卒の超お嬢様だったそうで、今はデザイナーで自分で会社を運営している。


(どうしてこんな鬼おかんになってしまたのだろう)

 と思ったのは口を裂かれても言えない。


 両親が勿体ないくらい優秀なので、ほかの家と比べて裕福だし、それに踏まえ朝から晩までこんな調子だから康太は自分は家族に恵まれてるなぁと思うことが多かった。


 そんな俺、梶馬康太だが。両親も、妹も美しく優秀なのに比べて。成績も普通、容姿も良くはないが悪くもない。

 良いところもなければ、特に悪いところもない。

 よく言えばオールラウンダー。悪く言えば凡人。とまとめられる自信と確信があった。

 まあ、色んなことに興味あったから趣味は多種多様なのだが。


「ごめん、急いでるから朝ご飯無しで!いってきまーすー!」


「「いってらっしゃい」」


「いてら~」


おい妹よ、そこは皆でそろえろよ!

 心の中で突っ込む。


「康太!」


「ん、何。母さん?」


 玄関から出ようとしたとき、母さんに引き止められた。


「今日は何の日でしょう!」


「俺のハッピー誕生日だ!」


 照れ臭いのでふざけ口調で誤魔化す。


 そう、今日は康太の17歳になる誕生日だ。


「今日の晩御飯楽しみにしてなさいよー!」


「うん、わかった。いってきます」


 梶馬家では何か特別な日になると、毎晩お祭りのようにはしゃぎまくる習慣(病気)があった。


 夜までが待ち遠しいと、胸を弾ませスキップしながら登校していったのだった。


 この日、康太はこの家族の茶番劇が最後になるだなんて思いもよらなかった――――



※※※※※※



――――――――ザーッザーッと勢いよく雨が降っている。


「くっそう、せっかくの俺のハッピー誕生デイが台無しじゃねえか」


 すこぶる機嫌がよかったのに雨のおかげで少し萎えた。が、家に帰れば直るだろう。


 家が見えてきたっ!


「たーだいま~!!」


『――――――――――――』


 まだ、帰ってきていないのだろうか。

 リビングに行ってみた。ちなみに、リビングと台所は繋がっていたのだが、壁一面に飾り付けがされていてここに誰か一緒にいたらいいのになと心底思った。


「びしょ濡れだから先に風呂に入っておこっと」


 待っていてもしょうがないので、風呂に入ることにした。


「まだ、帰ってこないのか・・・」


 風呂から上がってきても帰ってきた様子はない。 それから、1時間2時間と待っていたがついには9時を超えていた。


 あきらかにおかしい。

 急に仕事が入ってきたのだろうか。

 だがあれでも結構な親バカなので息子の誕生日なら仕事を放っても祝うはず。それに、妹が帰ってこないのがおかしいと思っていたその時。


電話が鳴った


「はいもしもし」


「もしもし、梶馬さんですか?」


 聞いたことのない男性の声と微かだが救急車のサイレンと雨の音が聞こえる。


「あの、何か用ですか。」


「――。実は、――――――――。」


 内容を聞いた瞬間、現実か夢かわからないほどの浮遊感と、言葉を発しようとしても声に出ないほどの胸の苦しみに襲われた。


 俺の家族が通り魔に遭って殺された。


 俺はただ立ち尽くすことしかできなかった――。



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