こころのムシ

ゆたりん

第1話 心の中の虫

わたしは心の中にたくさんの虫を飼っている。


この虫たちはいつからいたんだろう?すごく幼いときに気が付いたら心の中にいた。

まだ自分も小さく心というものが理解出来ていないときで、ふと空想にふけっているときにモゾモゾと空想に混じってきていたのを覚えている。

そして次第にその虫たちにも性格が現れてきた。虫に性格があるというのもおかしいのだけど、心の中の虫なのだからなんでもOKなのだろう。そして勝手に心の中で虫たち同士で話し合っていたり、まるで小さな人間のような振る舞いを見せるようになっていた。

自分が何かを見たり読んだりすると、いつもその虫たちが現れてきて勝手にあれこれ話始める。

川を眺めていて水の流れをじーっと見ていると、虫たちも

「水がキラキラ光ってきれい」

「魚とかいるのかな?」

「もし川に落ちたら流されて海まで行っちゃう?」

などいろんな話をしていた。たまに虫たち同士で意見が食い違うときは、自分が心の中のリーダーになって多数決をとっていたりと、当時を振り返るとよくよく変なことを考えていたのだと思う。


しかし、小学校の学年も上がるとそんな虫たちの姿は出てこなくなっていった。気が付いたらいなくなっていたというか、そもそも虫たちがいたこと自体をすっかり忘れてしまっていた。なぜ心の虫が消えてしまったのだろう?それは心の成長と関係があるのだろうか?それともいろんな人間関係が出来ていく中で、徐々に心の虫という存在が必要なくなっていったのかも知れない。


その後、いろいろあったわけだけども、ふとした拍子にその虫たちの存在を思い出した。なぜ思い出したのかは分からないけど、少しそれについて考えてみた。なぜ再び心の虫が現れたのか、について。

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