親指
「秀平、親指が一番短くて太い理由わかるかい?」
パパが唐突に訊いてきたので、僕は首を横に振った。
「親指、つまりお父さん指が他の指を一番下で支えている。そう、縁の下の力持ちの役割をしているんだ。そしてなにより、お母さん指のそばで支えている」
誇らしげに語るパパの表情は、いつも以上に輝いて見えた。するとリビングの方から、ママの声が飛んできた。
「ねー、ちょっと来てー」
パパはその声が聞こえてきた途端、背中を思いっきり叩かれたかのように飛び跳ねてリビングに向かった。しばらくして戻ってきたパパの表情は、歪んだ笑顔だった。
「秀平、パパはしっかりと責任を果たしてきたぞ」
そう言ってパパが突きだしてきた右手の親指は、とても細々と震えていた。
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