星を見る人たち.12

「ねえ、ネコ」

能力を展開しながら自分の世界に閉じこもってしまったすばるにかける言葉が見つからないらしく、ミオは寧子に話しかけてきた。

東雲しののめ寧子ねいこ。シノ、でいいわ。ネコなんて呼ぶ人間は一人でたくさん」

肩をすくめながら、寧子は言った。

「じゃあ、シノ。制服着てるけど、学生なの?」

不機嫌そうな顔をして、寧子は答える。

「そうよ。高校二年生。先々月に17歳になったところ」

すばるが独立したのが今年の三月で、その前から組んで魔物退治をしていた寧子は、そのまま半年間すばるの読んだ未来に合わせて、魔物退治をしている。「17歳になった」と聞いて少しだけ不満げな笑みをミオは浮かべた。そう寧子と離れてはいないように見える――事実、ミオは15歳である――のに、何がそう不満だと言うのかミオの体をじろじろ眺めている。身長差10cm弱が近くて遠い。

「ふぅん……」

視線が煩わしくて舌打ちをしてから、寧子は口を開いた。

「こっちからも質問してもいいかしら?」

変わらず不機嫌な態度をミオに取り続けているが、ミオは全く気に留めてない。気楽ではあるのだが、後ろめたさも感じる。

「いいよー。答えてもいい内容だったらなんでも訊いて?」

「あなたの杖って、いつから使ってるの?」

玄関のところに立てかけらている杖を指さした。ミオは笑って答える。

「あの長さまで伸ばしたのは三年くらい前だけど、13年間ずっと魔力を込め続けてる。糸術の訓練をさせられる羽目になったときから、いつか復讐してやろうと思って」

まぁ、それも今はできなさそうだけど、と笑うミオの目をじっと見て、寧子は言った。

「家族は大事にしなくちゃだめよ」

ミオも寧子の目を見つめ返して、一分ほど見つめあった後で、微笑んだ。

「……やっぱり、そう言うと思った。私の師匠と、シノはよく似てるもん。ねぇ、シノ。簡易事象干渉装置、使ってみない?きっとシノが命令すればアレは思い通りに動くはず」

それを聞いて、寧子はすばるの方を見る。いまだにすばるの手の中でピクリとも動かずにいる簡易事象干渉装置に改めて魔力を乗せようか考えて。

「魅力的な提案だけど、やめておくわ」

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