星を見る人たち.11

あれこれ動かしてみるが、ちっとも動かない。試しに軽くたたいてみたが、寧子の手が痛いだけだった。

「呪文を唱えながらじゃないと動かないとかそういう話なわけ?」

「ちょっと貸して」

ミオが寧子の手からひったくるようにして簡易事象干渉装置を持ち、力を加えた。

「ぐぎぎ……!なんでこんなに硬く……」

「一回きりしか使えないとか?もしくは、今まさに事象干渉?してる真っ最中とか。ミオちゃんは日本語使えるようにって考えて、それを使ったわけでしょ?じゃあ、今まさに日本語使えてるわけなんだから、装置が仕事してる真っ最中なんじゃない?」

ミオは体中の力を込めて、簡易事象干渉装置を動かそうとしている。

「そうだとしてもこんなに動かなくなるなんて……!」

舌打ちしながら、寧子が言った。

「ミオ。あなたはこの装置の仕組み、理解できる?」

すばるが触りたそうに見ているのに気が付いて、ミオはすばるに簡易事象干渉装置を渡しながら言った。

「人から貰ったものだから、理論は分かってても仕組みはさっぱり。すばるさんはどうですか?能力を使えば、何かわかりそうですか?」

ミオから受け取ると、じっと見つめてから、すばるは答えた。

「……ちょっとだけ。たぶん私と同じような能力を持ってる人が、色んな人を代償にすることで実現したんだろうな、ってとこまで。とんでもない技術革新なのは当然のことだけど、これを量産化するのも使い方を理解するのも、私の知るどんな魔術師にもできないと思う」

角度を変えてさすりながら、独り言のようにすばるは続ける。

「外側パーツひとつひとつは大したことなさそう。色んな種類の魔法道具を組み合わせて、同様の外側を作るのは不可能じゃないし、それなりに安価で実現できる。でも、大きさはこんなに小さくできない。もっと簡単なのは外側とコアを繋ぐ『関節』の部分。何の変哲もないプラスチックでも簡単に代用できる。壊れる前提で作ってるみたいだから、元から誰かが分解することを考えていたのかな。……うん。コアの部分だけはウチの設備とルールじゃどれだけ頑張っても無理。犯罪行為いっぱいして、色んな人から目をつけられて、世界中から指名手配されるようになってようやく試作品ができそう、かな?って感じ。いいなぁ面白いなぁ。作った人に会ってみたいけど怖いなぁ……」

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