星を見る人たち.7

「それで、すばる。一体リッケルハイムの記述をどこで見つけたの?」

自分の能力を不必要に明かす必要はないと判断して、すばるを促した。

「あ、うん。ネコの言う通り、小説の中での記述なの。一応ノンフィクションだって言われてはいるけど、明らかに創作のところもある本だからちょっと、ね?」

それを聞いて、ミオは肩を落とした。露骨に落胆している。

「……でも、元になった人は実在するんですよね?それなら多分会いに行けばなんとかなります。私のこともきっと分かるはず」

「待った、それっておかしくない?あんた異世界から来たじゃないの。なんでそれでわかるわけ?」

寧子の質問に、少し考えてからミオは答えた。

「リッケルハイム家の当主であれば、次元を移動する術が扱える、ということが一つ。私には扱えない術だけど、元になった家が残ってるなら知識として持っているはず。それともう一つ。私はどこへ行ってもリッケルハイム家しか扱えない術を使うことができる」

「それ、どんな術?この世界じゃ標準的なものだったらどうするわけ?」

「こんなものを、普通の人は絶対使わないわ」

ミオは糸を少し出して見せた。すばるがそれを見て目を丸くする。

「それ、まさか自分の神経に直接魔法をかけてるの?もっとよく見てもいい?」

どうぞ、と言ってミオは自分の手を出す。寧子からも、皮膚と糸が融合しているのが見えた。

「熟練の魔術師ほど肉体を媒体にするのが一番強力だって言うけど、本当にそんなことを実践する人は初めて見た。すごい、これ丈夫でしなやかだしちょっと扱い方を工夫するだけで長くて軽くて折れない刃物にもなる。確かにこんなものを武器にしたり、ましてや使いこなそうだなんて考える人は覚えがないかも。それに、この糸まだまだ成長の余地があるのね。後遺症を覚悟すれば街全体を覆いつくせるようになるんだ。あ、ごめんありがとう。この糸しまって。あなたの体に悪いでしょこれ。これは、私の術も見せないとかな?」

ミオの手をずっと見ていたすばるの黒い瞳が、不思議な光を放っていた。

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