星を見る人たち.6
「あったあああああああああああああああああああああああ!」
奥の部屋から叫び声がして、物音と足音が轟く。すばるがリッケルハイムのことでも見つけたのだろう。奥の部屋の散らかりようを想像するだけでだんだん頭痛がしてくる。どうせ寧子が片付けるのだ。
「敵襲!?」
ミオが寧子とにらみ合うのを止めて、身構える。寧子が命令の不十分さに気が付いて、舌打ちとため息の後で、上書きしてやる。これならミオに新しく命令するまでは有効だろう。
「
すばるが現れて、叫ぶ。
「リッケルハイムさん!見つけたよ!!あなた凄いお家出身だっていうのも間違いないの!」
すばるの大声のせいで部屋が少し振動する。そんなに力と体力が余ってるならもっと生産性の高いことでもすればいいのにと寧子が再び大きなため息をつく。すばるのおかげで、寧子はだいぶいつもの調子に戻ることができた。
「本当ですか?」
ミオの顔が輝き、耳がピンと立つが、すばるが手に持っているのはノートPCではなく文庫本と単行本が一冊ずつ。ミオの望むものが見つかった可能性は低い。
「ミオ。残念だけど、すばるのことだからどうせ創作で見つけたとかゴシップ誌で見つけたとかそういうオチよ。あなたの能力や立場を保証してくれるものではないわ」
寧子が水を差したのをミオとすばるが窘めるように見てから、ようやくミオとすばるだけで話ができることに気が付いた。
「え?今命令した?」
すばるが首を傾げて、寧子に訊く。魔法使いが自分のとっておきをそうそう簡単にさらけ出すはずがないだろうと冷笑を浮かべて、寧子が答える。
「ミオにね。上書きしたの。ちょうどムカつくことがあったから上書きにちょうどいいやと思ってね」
それを聞いて、ミオは目を丸くした。
「待って。本人が聞いたと思ってなくても命令って通用するの?」
ほほえみながら、寧子は言った。
「『石になれ』って魔力を込めて言ったらどうなるか、見せようか?」
「……ネコ」
半ば本気で言っていることに気がついたのだろう。すばるの顔がほんの少しだけ青ざめている。すばるはどうなってしまったのかを痛いほど知っているのだ。肩をすくめてから、寧子は言った。
「無機物だろうと天候だろうと、命令できるわ。私が命令できないとしたら余程の頑固者か、とんでもない神様くらいでしょうね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます