ヒイラギ.14

「アンバランスなものが悪いのかどうか、僕にはわからない。ただ、とてもじゃないが君のことを」

フィリップはまっすぐにヒイラギを見つめて言った。

「放っておけないんだ。危なっかしくて見てられない」

いかにもな顔とトーンで言い放ったフィリップに何度か瞬きをした後、ヒイラギは声を上げて笑った。快活で悪戯っぽく、そして可愛らしい――天使か悪魔を思わせる――笑いだった。

「そうか、あたしを放っておけないか。面白いな、フィリップ」

本当に面白くてたまらなかったようで身をよじってひとしきりヒイラギは笑い転げた。確かに元防衛用AIを放っておけないと人間が言い放つなどバカげている。だが、ヒイラギは放っておけないのだ。「面白そうだ」と言って破滅に身を置いてそのまま飲み込まれてしまいそうな危うさがある。

「面白いフィリップにひとつプレゼントだ」

笑いの合間にヒイラギはフィリップに向けて何かを投げつけた。フィリップが受け取って見てみると、輪郭がギザギザと尖った葉をかたどった装飾のついた腕輪だった。銀色に光っており、どこかで見たことのあるような形をしている。

「大昔のクリスマス飾りだ。あたしの家を探検してる時に見つけた。調べたらその葉っぱヒイラギだって言うから身に着けやすいように腕輪に改造した。魔除けに使えるって話だから、ノイズデブリの対策にもなるだろ?」

試しに身に着けてみるとキツすぎず緩すぎず、フィリップの腕につけるのにちょうど良いサイズだ。自分フィリップ自身の夢の中の出来事にしては違和感があると思いながら、素直に受け取ることにした。

「君の分はないのか?」

フィリップの質問を無視して詰め寄って来たヒイラギは、フィリップの胸板をつつきながら言った。

「二言はないな?しっかり寝て、目を離さないようにしっかり見張れ。いいか?あたしは目を離したらきっと消えちまうぞ?その腕輪をあたしの形見にしたくないって思うなら、しっかりあたしを守ってくれよ、王子様」

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