ヒイラギ.11
「わかんないんだ?」
女神が俯いたヒイラギの目を見つめて、優しく笑いかける。
「ああ、分からない。でもきっと探している敵というものはアイツだろう?この前からあたしの家の近くを這いずり回ってる真っ黒いナメクジみたいな気色悪いぶよぶよだ。なんでかアイツに近づきたくてしょうがない。だからきっとあたしはアイツの仲間なんだと思う」
ヒイラギの顔色は蒼白で、小刻みに震えていた。
「私の敵になるのが怖い?私、弱っちいと思うんだけど」
ヒイラギは頷いた。
「ああ、きっとあんたは弱っちいだろう。今も隙だらけだ。一発銃弾を撃ち込めば相討ちになることだろう。だから怖い。それを物ともしないだけの何かを抱えているから、そうも隙だらけでいられるんだ。あたしがネルの支配者ならば間違いなくそうする」
「大丈夫だよ」
ヒイラギが言い終える前に、女神が割り込む。
「だいじょーぶ!あなたの由来がなかなか見えこなくてちょっと時間かかっちゃったけど、しっかり掴めた!」
ヒイラギの両手をしっかり握って何かを渡してから、女神は言った。
「私たちと一緒に、ノイズデブリの退治をしてくれないかしら?前金は今渡した物。どう?少しは怖い気持ちも薄くなった?」
ヒイラギはおそるおそる掌を開き、女神から渡された物を見て、目を丸くした。
「宇宙船の、模型?」
簡単に握り潰せるような小さく華奢な模型だ。フィリップは見覚えのないものだが、ヒイラギはまじまじと眺めて、何かに気がついたようだ。
「そうよ。見覚えがあると思うんだけど」
女神の茶目っ気たっぷりの笑みを見て、ヒイラギは大笑いする。
「ああ、そうかそういうことだな。確かにあたしはこれを見たことがある。あのナメクジ野郎みたいな闇を気色悪いと言いながら焦がれる理由も分かった。なるほど、女神様を知らない上に女神様のデータベースにもあたしが存在しないわけだ。ははは」
笑い合うヒイラギと女神に、フィリップは疎外感を感じた。
「女神様、一体ヒイラギは何だったんですか?」
女神はにっこりと満面の笑みを浮かべる。
「ん?ひ・み・つ」
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