　夢を見て。

　萌え草の香（か）。清蜜（みつ）いろに濡（ぬ）れた庭。

　苔（こけ）を冠（かむ）った童（かみ）さまと、花びらの窓布（まどぬの）。

　風に歌えば。

　火の散る音。暗がりをゆく翠（みどり）の虫。

　湧きたつ水と雲のうえ、龍（りゅう）を眺（なが）める古びた縁側。

　影（かげ）を慕（した）い。

　暮れ方は早（はや）く。金いろの畳（たたみ）で見る彼（ひ）岸（がん）花（ばな）。

　燃える山やまは暦（こよみ）を運（はこ）ぶ。ひろい稲海（いなうみ）も。

　月は冴（さ）える。

　霜（しも）の降るみち。静（しず）やしずやと青いろの肌（はだ）。

　足もとに踊（おど）る氷筍（ひょうじゅん）の群（む）れ、虹（にじ）をとがらせて。

　（思いでは結（けっ）晶（しょう）化（か）して、きらり、きらりと綺（き）麗（れい）なものさ。）

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