side B 結局

 基本的に考えて無理があった、と言うか私にはキツすぎた。


 何が?


『それに関しては全面的に優奈が悪いと言うか、考え方の問題というか……』

「デスヨネー……」


 現在私は自宅のベッドに仰向けにダイブした後、親友の佐藤に電話で相談、という名の愚痴を吐き出していた。

 私と佐藤は小学校からの付き合いで、現在花の女子大生中の今でも交流がある、所謂親友だ。


『と言うか、まず言わせて貰っていい?』

「ど、どうぞ?」


 私がそう言うと、親友は電話越しで大きく息を吸い込んだ後、大きな声で、


『なんでアンタ弟と付き合っちゃってんのぉぉぉぉ!!!!!!』


 それはそれは大きな声で、ブラジルまで届くのでは? と思ってしまうほど大きな声で親友は私の耳元で叫んだ。


「いやぁー、まずは外堀から埋めて行こうかと思いまして……」

『埋める外堀が間違ってるでしょ!!』


 いやはや、それは私も重々承知でございますけども……。


『と言うかまずアンタは行動に出るのが遅すぎなのよ! アンタが理不尽に太一くん振ってから何年経ったと思ってるわけ?』

「黙秘権を行使します……」


 そりゃ私だって思うところはある、幾ら何でも今更感ハンパないよなー、何て一人自室で転げ回るくらいには。

 それでも行動に移せなかったのは、単に私が臆病だからだろう。


『はぁ、アンタの相談に毎回親身になって答えてあげてる私の身にもなって欲しいんだけど……』

「どれどれ、私に相談してみ?」

『今現在こじらせ中のアンタに相談するとか地雷でしかないわよ』


 酷い、それでも親友かっ。


『まぁいいわ、そんで? 太一くんの弟の祐司くん? とのデートはどうだったのよ?』


 親友はため息をついた後なんだかんだ言って相談に乗ってくれると言う程で私に質問してきた。

 やはり持つべきものは親友だ、まぁでも……。


「……聞きたい?」

『いや、できることなら聞きたくない』

「酷いっ!! それでも親友か!!」

『あーハイハイ、聞きます聞きます、この頼れる親友佐藤様がね』


 なんだか適当にあしらわれてる感が尋常では無いのだが、気にしない。


「結論から言うと、祐司くんとのデートは途轍もなく完璧でした、

 ……でも」


 そう、今日の相談内容は先日人知れず行った祐司くんとのデートについてだ。祐司くんとのデートは本当に完璧で、正に女性が求める理想のデートと言うものだった、少なくとも私以外の女性には、と付け加える必要があるが。


『簡単に略すと、クソつまらなかった。と?』

「そ、そこまでじゃないよ!!」

『でも結論から言うとそんな感じでしょ? アンタから話聞く限りでは、その祐司くんとやら、なかなかのやり手ね……」


 確かに親友の言う通り、祐司くんとのデートはあまり楽しくは無かったし、私自身祐司くんはなかなかのやり手であると実感している。


『アンタ、もう祐司くんでいいじゃない……、ルックスもなかなかで気配りも出来る、おまけにかなりいい大学に入ってるらしいし』

「親友よ、……それだけじゃダメなんですよ」

『ウザ★』


 なんだか電話の向こうに只ならない殺気を感じるんですけど。


「と、兎に角! 私は太一じゃなきゃダメなんです!!」

『……なら何で祐司くんと付き合ったの?』

「うぐっ……」


 そこを突かれるとかなり痛い、割と致命的でクリティカルである。

 何も私は最初から祐司くんとの交際を進んで始めたわけではない、何なら最初祐司くんに告白された時、断ったのだ、確かに。


「強引に押しに押されまくってですねぇ……」

『相変わらずのお人好しね、優奈は。私は優奈のそう言うところ美点だと思うけど、今の状況的にその美点が裏目に出てるわね……』

「ううぅ……どうしようぉ」


 困りに困り、困り果てて泣き出してしまいそうではあるが、私は泣かない。私強い子、泣かない子!!


『そう言われてもねぇ……ん? 山田から電話だ、ゴメン優奈、あとで掛け直す!』

「ええぇぇ……」


 親友はそう言うと有無を言わさず電話を切ってしまった、何て薄情なやつなんだろ、いや、実際にはとてつもなくいい人で、面倒見がいい親友ではあるのだが。

 もし私に太一と言う存在がいなくて、私が男だったならば即座に掻っ攫うくらいにはこの親友は優良物件だ。


 しかし悲しきかな、こちらの親友、彼氏居ない歴イコール年齢の今時見ないほどの純情ちゃんだ。

 ……まぁ、かくゆう私も今まで付き合った事のある人数は祐司くんをいれて二人なのだが。


「あぁぁぁぁぁ、全部太一のせいだ……」


 何て畑違いにもほどがあり過ぎる言葉をため息と共に吐き出したあと、私はベッドから立ち上がる、そして部屋の中に位置するデカめの本棚から先日購入した文庫本を取り出した。


「これ、太一の書いた本、何だよね……」


 表紙には可愛い女の子が制服をエッチにはだけさせているイラストが載っている、最初これを見たときは少し、というかかなり引いたが、今では私の一番好きな本だ。


「はぁ、太一はこうゆう銀髪美少女が好みなのかな……」


 姿見の前に立ち、表紙の女の子と自分の顔を見比べてみる、しかし純日本人の家系に生まれた私に銀色の髪など到底似合うはずもない。


「……なんか妬けちゃうな、って何言ってんだ私」


 自分で自分に突っ込んだあと、ベッドに放り投げておいたスマホから着信音が鳴り響く、慌てて確認してみると相手は親友の佐藤で、私は胸を撫で下ろしたあと電話に出た、


 すると関口一番、


『優奈!! 私に任せて起きなさい!!』

「え? どういう……」

『とりあえず詳しいことは後ほど! アンタは目一杯可愛い服と顔を用意して当日まで待ってなさい!!』

「ちょ、……って切れた」


 親友の謎の電話に首を傾げながら、なんだか私は謎の汗を掻くのだった。

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