ヒーローは裏切らない

秋野シモン

第1話

これがどんな物語にせよ、今喋ってる人間が誰か分からなかったら進まないから、とりあえず自己紹介を。

俺の名前は五木 薫いつき かおる、16歳、AB型、星座とかは、忘れたし、多分どうでもいいだろうから省く。


俺は今、部室で、長テーブルを連結たせたものの一角に座らされている。もちろん座っているのはパイプ椅子で、テーブルじゃない。

テーブルを挟んで対面の位置に座っているのは、一人の少女。大きくて少しつり上がった黒目に、バランスの整った美少女と言って差し支えない顔立ちで、しっとりと長い黒髪をおさげにして両肩に垂らしている。

だが、そんな容姿については今はどうでもいい。彼女は俺をこの状況に巻き込んだ張本人で、今はそっちの方が重要だ。


「君も粘るな、イッキー。さて、君に賛同してもらうためにはどうするべきか」


「とりあえず、話だけでも聞いてもらって、それからまた考えてもらえばどうでしょう」


そう言ったのは、俺の向かって右側に座る少女。彼女もまた、茶色いたれ目の、美少女と言って問題ない顔をしている。瞳よりも明るい色の、腰近くまで伸びた赤毛が、風で揺らめいている。


「そうだな。とりあえず、シズの意見も聞こうか?」


そう言って最初の少女が今度は俺の左方向に座っている、銀髪のこれまた美少女と言って通るであろう少女に訊くが。銀髪の少女はパソコンに向かったまま、反応を示さない。イヤホンをしている訳じゃないので、聞こえてはいると思うが。


この無反応を『文句なし』の意思表示ととったのか、黒髪の少女、かがりマコトは、再び俺の方を向き、


「それでは、まずは君が何者なのか話そうじゃないか」



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