松尾芭蕉が現代に来たら

お湯の煮込み

第1話 タイムリープ

僕は、今日も俳句を読んでいた。

西岡浩史にしおかひろし。日本文化について興味を持っている高校生。

趣味は何かと訊かれると、文化に触れあうこと。お茶をたてたり、習字に行ったりすることが、もっぱら僕の趣味だ。

周りからは、一緒にゲームしようなどと言われるが、僕はそんなものに興味はない。

ただ、帰って句を詠むぐらいしか楽しみはなかった。

日本の文化といってもいろいろな種類はあるが、僕はそのころ、俳句にはまっていた。


その日もいつもと同じように学校に行き、学校で将来いつ使うのかもよくわからない授業を受けていた。そして、部活である茶道部の活動を終えると、いつものようにどこに寄ろうともせず、ただ帰って行く予定だったが、違った。


道の真ん中に和服を着た男性が倒れているのだ。この時代に和服を着ているのも珍しいし、顔も外国人ではなさそう。それ以前に、周辺に日本の文化に関する観光地がないのだ。僕はすぐにその人のところに駆け寄り、意識があるか確認した。意識はあったものの、倒れる前の数分の記憶がないらしい。あたりを見回しては「ここはどこだ?」とつぶやくだけだった。


そして、男性は僕に話しかけた。

「ここはいったいどこなんですか?」

「ここは駒宮こまみや市ですよ。」

声や顔から、年齢は40代後半だろうと推測した。

この顔はどこかで見たことがある。しかし、思い出せない。

とりあえず、未開封のお茶のペットボトルを開けて、その人へ差し出した。

しかし、飲み方がわからないらしい。その時僕は、ただならぬオーラをその人から感じた。

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