3.母はとても優しい?


俺の今の母親はとても優しいと言う印象をしている。だが昔の記憶を思い返してみるとそんなに穏やかで優しさ全開の人ではなかった。いつも何事にも厳しく前向きで狂人並みに怖い印象を持ち合わせていた。元最狂戦士の一人である彼女───母は生前の俺と気が合う感じの仲であった。どうして変わったのか良くわからないけど娘の俺に対してとても優しく育ててくれていると理解できる。だから俺は今、お母様に甘えているのだ。


「ねぇお母様。お母様ってどうしてお父様と結婚したの?」


「ふえ?」


俺の唐突の質問に対して対応できていなかったのか変な声を出した母。ちょいっと言葉の選択間違えた。こんな5歳の子どもが突然、結婚って言葉が出たら誰だって驚くよな。すみません中身が中年の大人ですので。


「ソフィア、あなたはちょっと大人っぽいわね。何処でその言葉を知ったのかしら。」


顔をひきつりながら笑顔な母が何か怖い。そうだ!あれを言おう。


「えっとね。前にお父様が私に教えてくれたよ♪」


もちろん嘘だ。お父様の事を嫌っているからこそ平気に言える。それ以外にガレスの奴が全て悪いのが責任。俺は悪くないし関係ない。


「あ、あの人と来たら。もう!後でぶち...じゃなかったお説教ね。」


待て待て、さっきぶち殺すと言いかけなかったか。怖いって、今度から余計な事は言わないでおこう。かつての親友が殺される前に。そしたら扉からトントンと音がなり。


「失礼します。お嬢様、ティア様。」


部屋に入ってくるリアーナ。何か用かな?


「どうしたのかしら。何かでも?」


「特に対したことではありませんがティア様。此方を」


一つの紙切れを母に見せる。見た感じだと大事な書類のようだか。何が書かれているのか気になるけど子どもの俺に見せてはくれないだろう。


「ありがとう。この案件は後で処理しておくわ。」


「わかりました。では二人のお時間をごゆっくり。」


一礼して退出するリアーナ。書類の内容が気になるんだけど母に何とかして聞いてみよう。


「ねぇお母様。先程の紙切れに何をかけれていたのですかあ?」


「ソフィアには...関係無い話よ。」


やはり無理でした。頑張って上目遣いで可愛く言ったのに何時もなら教えてくれるのに今回は余程の事だったのか口が軽い母は一言も語らなかった。むしろ元気が無さそうに見える。


「お母様、大丈夫ですか~?元気出して!」


暗い感じの母を慰める。ティアがこのような表情をするのは初めて見るような。


「ソフィアありがとうね。娘にカッコ悪いところ見せてしまったわね。ねぇソフィア。これからこの前お隣に引っ越してきたステファニー家にご挨拶に一緒についてくる?」


最近隣に引っ越してきたステファニー家とは確か平民の家系だったような。ご丁寧に引っ越し祝いとかくれた覚えがある。この髪に着けている可愛い髪飾りをプレゼントしてくれてそれなりに良い人達と言う印象を持てた。


「ついてく~この前のお礼したいし。」


「じゃあ決まりね。ステファニー家には貴女と同い年の娘が居るらしいのよ。友達になれたら嬉しいわね。」


同い年の子が居るのか。どんな子なんだろう。転生してから友達一人も作ったことが無い俺にとっては同い年の女の子の友達が欲しい。別に嫌らしい意味とかじゃなくて憧れじゃない?


「そうだね♪少し緊張するけど私頑張る!」


「まあ!段々ソフィアが成長する姿を見て私もう...我慢できないわぁ~」


俺の体に抱きついてくる母。ぎゅーと締め付けられて苦しい。このままだと死んじゃう。お母様の筋力は次元を超えるほどの力。丁度良い。ここで昔の最狂戦士だった頃の母を紹介しよう。ティア・アストレアまたの名は冷却魔人と呼ばれた女性。次いでに言うと俺の幼馴染でもあった女性だ。何時も冷静で物静かな彼女は何処か冷たくそれに魔人並みに強い筋力を持ち合わせていたことから狂人の一人として恐れられていた。


「助かったよぉ~。ありがとうリアーナ。」


「ティア様、流石にあれはやり過ぎです。いくら優しくなっても筋力は変わらないのですから程々にお願いします。」


「はい.....すみませんでした。」


あの後、丁度リアーナが入ってきたので助けてもらった。危うく気を失うところだった。今は説教されているところでもある。相当反省している母を見て俺は。


「リアーナもこれぐらいにして。お母様も反省しているようだし。」


「まあお嬢様がそこまで言うのならわかりました。でも次からは気を付けてください。これはガレス様の頼みでもあるのですから。」


何と。あの父、ガレスがそのようなことを。まあアイツの場合、娘の安否が優先なんだろうけど少し見直す。母はとても強くて優しい娘大事の良い母親として出来ていると思うよ。少しだけ羨ましいと思った。もしも生きていたのなら俺にもこんな幸せが送れていたのだろうか。正直悔やむがこの生活も今のところは悪くないと思える時間だった。

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