2.お出掛けです


俺はこの体になってから始めて親と同行せずにお出掛けしている。隣にはメイドのリアーナが居るから安心はする。今のこの体では以前見たいに闘うことはまだ出来ない。怪我をする可能性だってする。でも安心しろ。中身は大人だから。


「それでお嬢様、どちらに向かわれるのですか?」


リアーナにそう言われようやく気付く。そう言えばどこ行くのか教えていなかったな。図書館に行こうとしているのだ。図書館には魔法関連の本とか古代文字の本などが沢山置かれている場所。今から独学で勉強しこの国についても知りたいところ。今の世界は魔王に侵略されつつあり、崩壊しようとしている。まあ俺にとって魔王は興味もないし関係もない。


「図書館に行くの。ちょっと調べたいことがあってね。」


「そうですかお嬢様。お嬢様は本当に勉強が大好きですね。」


褒められて嬉しくなる俺。勉強は大好き。生前は学ぶことすら出来ないまま騎士団に入団しその後に最狂戦士の称号を貰えて勉強をする暇などなかった。この機会を上手く利用してもっとこの世界を知ろう。


「おっ!ソフィアちゃんじゃないか。」


武器屋のおじさんが挨拶してくる。


「おじちゃんこんにちは、今日もお仕事頑張ってね。」


おじさんにはこの前、お世話になったからお礼にスマイルをあげる。


「リアーナちゃん。ソフィアちゃんとお出掛けですか?」


今度は酒場の看板娘のお姉さんが聞いてくる。


「はい、そうです。お嬢様がお出掛けしたいと申し出がありましたので」


「まあ!そうなんですか。ソフィアちゃんも成長したんだね。」


お姉さんに頭を撫でられる。気持ちいいし嬉しくなっていく。お姉さんに「お姉ちゃんバイバイ!」と手をふってさよならする。 この体になって得したことは色んな人に褒められるし甘えてくれる。こんな楽な生活が生前は送れただろうか?


しかしこの国は賑やかだな。人が一杯で騎士団に冒険者、商売人に一国民が元気に活動している。この国の名前はアストラル王国と言ってアストラル家の王族が築き上げたとか。昔は小国だったが今では大都市とも呼べるほど。生前は一度も訪問した覚えがなかった。俺が向かっている図書館も有名どころで一般の人は入れてくれないらしい。それだけ重要な物でも取り扱っていると言う。


図書館にようやく着いたところで目の前にいる監視している騎士に入場書類を渡せば入れる。


「この場に入りたいのなら書類を渡してください。」


ちなみに書類など持ち合わせていない。必要が無いから。アストレア家の権限とも言える特権だ。


「すみませんが此方の図書館に入りたいとお嬢様が申しますので通らして宜しいでしょうか?」


「ん?書類を提示してくれるなら通してやる。ん?もしかしてアストレア家の長女ソフィア様ですか?これは失礼しました。ではどうぞ。」


ようやく通してもらえた。あの騎士の男、私がアストレア家だと言うことを知らなかったのか?まあ気にしないで置こう。


「お嬢様、それでどの本を読みになります?」


身長が低い俺は自分で本を取ることが出来ないからリアーナが変わりに取ってくれる。古代文字が書かれておる本が読みたいから頼む。特に竜神の詳細が書かれているのを読みたい。


「お嬢様も不思議な本を読みになるのですね。竜神について知りたいとは。」


「良いんだもん。私はこれが知りたいんだから。」


そう、竜神について知りたい。俺を殺した奴の知識ぐらいは持っておきたいし、またいつ現れるかわからないので今の内に弱点とか把握しときたい。


「竜神ですか.....確か今から7年前にある村に久しぶりに姿を現しまた姿を消したと言う調査報告の資料があったと思います。」


ある村に7年前に現れた.....それってライザート村のことじゃん。いやいや超気になるんですけど。目を輝かせ始める。


「見たい見たい。リアーナ、その資料は何処にあるの?」


興味津々に問いかける。その資料を見れば村の安否がわかるかもしれないし何よりその後どうなったのか知ることが出来る。


「えっと...確かガレスお父様の仕事部屋にあるかと。以前、わたくしが紅茶をお持ちになりました際に机にそのような資料が置かれておりました。」


よりによってガレ...お父様の部屋にあると知ってシュンと落ち込む。俺はお父様事ガレスとは戦友の仲であった。アイツとは仲が良いけど今のアイツはちょっぴり苦手です。お父様の事を思い浮かべる......。


「ソフィア、パパだぞ。ほーらソフィアが好きだったクマさんのぬいぐるみだ。」


時には。


「ソフィア~仕事で疲れたパパを癒してくれ!」


とぎゅーと抱きつかれたことも。そしてある日は。


「ソフィア、新しい服だぞ~。女の子なんだからスカートははかないとね。」


女の子だからと言っても中身は男である俺に無理やりスカートをはかされたことも。もっと沢山あるけどこれ以上思い出すとおぞましい。だから俺はお父様が苦手である。部屋にも入りたくないほどの。折角竜神やライザート村の詳細を知ることが出来るのにお父様と言う存在がまた妨害してくる。俺はあることを思い付く。


「ねぇリアーナ。お父様を葬ってもいい?ふふっ」


「お嬢様!正気に戻ってください。駄目ですよ。」


「冗談だよ。」


お父様のことはこの際置いといて今のところは竜神と村の事は保留にしとこう。それに今日は新しい情報も得られたし家へと帰ることにした。

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