第6話「シツケ」

 昼が過ぎたので『宇宙船の修理』をする為に、再び僕らは山へと向かった。

 え? 小さいんやから、家に呼び出せばいいやんだって? そのハズやったんやけど……亜空間に戻らなくなってん。

 と言うことで、いざ山へ。


 近道をしようと学校のグランドを通っていたら、プールに向かう途中の安夫に会ってしまった。


 夏休みの宿題には選択する宿題があって、

 『自由研究』

 『学校のプールに10日通う』

 『あさがおの観察日記』

 この3つの内1つを選ぶ。

 安夫は『プール』を、僕は『あさがおの観察日記』を選んでいた。


安夫「これが、秋男の犬かぁ」


 最近では、なんだか自分の犬のような気がしていたが、そういえば、名義は秋男の犬だった。


安夫「お手!」


 差し出された手を犬は、ペシっと叩き払う。


安夫「……」


 安夫はムキになって何度も何度も手を出すのだが、その度に何度も何度も犬は、その手を払いのけた。


安夫「なんや? この犬?」


 しかし、諦めの悪い安夫は、ポケットから黄色のゴムボールを出して犬に見せると、


安夫「これなら、どうや!」


 そう言って、ゴムボールを遠くに投げた。

 1分くらいだろうか? 時が止まるような感覚を味わったのは……微かに、風の音だけがしていた。


安夫「ハァハァ、なんで俺が取りに行かなアカンねん! なんなんや? この犬!」

広志「シツケされてへんのとちゃうか?」


 僕は笑いを堪えながら、そう答えた。


安夫「信じられへん、秋男はインコ喋らすぐらいやぞ」

広志「買ったばっかりやからちゃうか?」


 僕は必死で笑いを堪えながら、そう答えた。


安夫「あ! そうや! 秋男が帰ってくるまで、コイツに何か芸でも仕込まへんか?」

広志「こいつアホみたいやから、無理やって」


 すると突然、犬は激しく吠えだし、安夫が後ろに野良犬でも入って来たのか?と振り返った瞬間、犬の右フックが僕の左頬を打ち抜いた。


広志「イッテェ~!」

安夫「ん!? どうした広志?」


 まさか犬に殴られたなど言えるハズもなく、左手で頬を押さえ犬を恨めしそうに見ながら、


広志「ちょっと虫歯がね……」


安夫「おらん相手に吠えるバカ犬っぽいから、芸教えるんは諦めるかぁ。んじゃ、俺プールあるし、行くわ!」


 そう言って、グランドの奥にあるプールへと走って行った。


 大きく振りかぶった両手

 高く上げられた足

 全身を使ったモーションは、まるでプロ野球の投手のようで……って、オイ!


 犬「フン!」


 見事に、50m先の安夫の頭に小石がヒットする。 


 犬「どうや、強肩やろ?」

広志「狂犬の間違いやろ?」

 犬「お前ベタやな」

広志「自分のフリがアカンねん」


安夫「イッテェ~! 何や、隕石か?」

 犬「アイツ……お前よりアホやろ?」

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