第72-1話 夢見御殿にて《前編》
雄也達の身体が光の粒子に包まれ、視界が明るくなり見えなくなる。やがて視界が晴れた時、目の前の景色は、以前雄也達が
「あれ? ウォータリアの森……じゃあないよね……」
三人共、妖精界の装備へと格好は変化しているため、無事に移動が出来たのだと判断出来るのだが、到着した先が、森の中ではなかった。赤い柱が特徴の部屋中央、階段から数段あがった壇上に
「どこなんだ……ここは……」
「ルナティによると、
雄也と和馬に続けて発言したのは優希だ。
「すげーな、優斗。優希になると色々分かっちまうんだな」
セクシーな衣装に戻った優希を横目で見ながら和馬が驚く。
「でも人間界に居る時は、ルナティを感じられなかったんだよね。こっちだと、色々分かるみたい。あ、この部屋に誰か近づいてる……たぶんあの
優希が
「お帰りなさいませ、皆様。お待ちしておりました。
弥生がゆっくり三人へ近づきペコリとお辞儀をする。リンクよりも背が低く、見た目は幼女にも見える浴衣姿の弥生は、見た目よりもかなりしっかりしている印象だ。
「ほ、本当に弥生さんだ。優希ちゃん、凄いな」
そう呟いたのは雄也だ。
「弥生ちゃん、どうやって私達をここに連れて来たのかしら?」
そう言うと、弥生の側へ素早く寄り添い、突然頭を撫で撫でし始める優希。
「ちょ!? 優希ちゃん?」
「おい、何やってんだ優斗!?」
「はぁあ……ルナティ様の温もりを感じます……優希様、お察しの通りですよ……
「いいわよー、弥生……おいで……」
優希のたわわに実った甘い香りがする二つの果実にそっと埋もれる弥生……そのまま綺麗なツルツルの肌をした両腕で弥生を包み込む優希……それにしても、ルナティと弥生は元々どういう関係だったのだろうか……。
「おーい……優希ちゃーん……戻っておいでーー」
「優斗……男の姿だったら訴えられてるぞ!」
雄也と和馬の声を聞いて、優希が我に返る。
「ん、へ? ええ? 弥生ちゃん!? え? ルナティ! ちょっと何やってんのー、待って待って」
二つの果実からそっと離れ、そのまま顔をあげる弥生。どうやら優希ちゃんの身体の中に居るルナティが、弥生を
「優希様のお姿でも……私はいつでも大丈夫ですから……お
上目遣いでウルウルした瞳で優希を見つめる弥生、最早それは幼女の表情ではなかった。
「弥生ちゃんーールナティと今まで一体何を!? しゅ、趣味じゃないからーーー」
そのまま弥生の身体をそっと離して置くと、優希は部屋の外へ猛ダッシュで出ていくのであった……。
「ルナティ様も素敵ですが……優希様も素敵ですね……は、私とした事が、雄也様、和馬様、失礼致しました。さぁ、参りましょう」
正気に戻った弥生が少し
「う、うん、い、行こうか……」
「優斗……あいつ大丈夫なのか……」
雄也達は弥生に案内され、目的の場所へと連れていかれるのであった。
「十六夜様はもうじき戻って参ります故、こちらでお待ち下さい。私はもう一方客人を案内します故、一旦席を外させていただきます」
弥生に案内されたのは、いつも十六夜が居る巫女の間だ。以前、十六夜とお茶会をした時と同じ、白く美しい刺繍が施されたクロスが敷かれるテーブルの上には、紅茶とクッキーが人数分、用意されている。雄也側に三つと、対面する側に二つ……十六夜と弥生の分だろうか?
「いやいや、優斗。何普通に紅茶飲んでくつろいでるんだよ?」
そう言ったのは和馬だ。あの後、一目散に逃げ出した優希が普通に巫女の間で寛いでいるんだから、突っ込むのも無理はない。
「いや、ルナティが此処で待ってたら皆来るって言うからさ。弥生ちゃんは昔からルナティを
溜め息をつく優希。自分が
「はいはい、優希ちゃんの趣味は分かったから。それにしても
「留守にしていても
雄也の疑問にルナティの解説を優希が同時通訳してくれる。
「なるほどな。じゃあ、あの弥生って子は、見た目に似合わす相当な力の持ち主って事になるんだな」
何でも見かけで判断しちゃあいけないなと和馬。
「――
突然目の前から声がしたものだから、椅子から転げ落ちそうになる和馬。
「び、びびったー」
「十六夜さん、いつの間に」
和馬に雄也が続く。そして……。
「ちょっとぉおーーー、十六夜さん! 酷いですよぉおおー! どうして人間界でも
「あら? お気に召さなかったかしら? ワンピース、似合ってましたよ?」
「あら、このクッキーしっとりサクサクで美味し……だぁーー!? 十六夜さん、そういう問題じゃないですって! 俺のアイデンティティの問題ですからー」
優希ちゃんにとっては死活問題らしい。そういう割に受け入れてる方じゃないか……と雄也は横目で優希を見ている。
「そうですか……ルナティが優斗さんとひとつになって幸せそうですから、このままでもよろしいかと思っていたのですが……分かりました。じゃあ優希さんにはルナティの身体を取り戻す手伝いをお願い出来ますか?」
「はい、アイデンティティーが取り戻せるなら何でもします!」
優希が十六夜の両手を自身の両手で包んでお願いする。見た目どうみても弥生よりも幼女に見える十六夜な訳だが……。
――これでも千歳を超える千歳のロリ……ゴボンゴボン、千歳の幼女なんですよね……見た目は、女子高生が小学生にお願いしているように見えるんですけどね。
雄也は腕組みしながらその光景を黙ってみていたのであった――――
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