第64話 リリスの最期
星空の舞台でリリスと対峙する女優斗。長く続いた夢の都での戦いは、少しずつ終局へと近づいていた――――
「闇へと堕ちよ!
「闇を浄化せよ!
漆黒の球と光輝く球がぶつかり合う! 今までなら相反する力で爆発が起き、両者が反動で弾かれる……雄也もそうなるのではと、少し離れたところから戦況を見守っていた。
「くっ、貴方……ルナティじゃないわね……どういう事? ま、まさか!?」
自身の翼で身体を覆い、ガードしたのはリリスだった。女優斗が放った
リリスは思案する。そもそも、前回ルナティは
「も、もしかして……眼鏡君?」
リリスは目の前に居る
「だったら何よ?」
リリスの疑問へ答える女優斗。
「本当に……あはははは……なになに? 眼鏡君、そんな趣味があったの? そう、あなた変態さんだったのね!? じゃあルナティはあの時死んだって事かしら? 残念だったわね。その格好、
こみ上げてくる笑いを堪えながら、リリスが優斗を変態よばわりする。『ルナティが最後の力を使い、
「うるさい! これは趣味じゃないし! それにルナティは生きてるよ。今ルナティと俺は
ブラウンの髪をかきあげ笑う女優斗。その仕草は女性そのものだ。しかし、
「
リリスが否定する。透過技は聞いた事があるが、融合なんて、見た事も聞いた事もなかったのである。
「だったら試してみる? 俺もびっくりだけどさ、この胸も本物だし、時々女口調にもなるし、間違いないと思うけど?」
自身の両胸を持ち上げるようにして、
「そう、じゃあ試してあげるわ!
リリスが
「
ルナティが放つ鞭撃とは違う光を放つ鞭撃がリリスの背後から放たれる!
「なっ!?
慌てて、
「嗚呼!?」
身体に鞭の衝撃を受け、リリスは気づいた。投げずに鞭攻撃を受け止めるために使っていた闇影槍がいつの間にか
「あなた……
リリスが女優斗を睨みつける。今までの余裕の表情はそこにはない。
「
ニヤリと笑ったのは女優斗だ。
「くっ、 ―― 地獄からの
「だから、無駄だってば」
なんと
「な、なに!? 何なの貴方! 反則よ! 最大級の闇魔法よ?
「あ、このオーラの事? さっきあなたが言ってた
「わかったわ、私の負けよ……ねぇ、眼鏡君、私と手を組まない? 君となら世界征服も夢じゃないわよ?」
「
女優斗の中に居たルナティが代わりに答えたようだった。
「気に入った物を手に入れただけよ! 何が悪いというの! この変態が!?」
後ろに潜ませていた尻尾を突き刺そうと女優斗に向ける! が、その先端すら女優斗の身体を覆うオーラによって弾かれてしまう。
「ちょっと! 変態じゃないわよ! 俺も好きで
リリスを冷たく軽蔑するような目で見つめる女優斗。興奮すると余計に女口調になるらしい。
「分かったわよ、もういいわ。じゃあ、みんなまとめてこの空間ごと吹き飛びなさい! ―― 地獄からの使者よ、漆黒の絶望となり、覆い尽くせ!
リリスの全身から刹那闇が放たれる。空間を包み込み、押し潰さんと、広がろうとする漆黒の闇。だんだんと空間を覆い尽くそうと襲いかかる!
「―― 夢見の導きよ、闇を包み、希望の光となれ!
しかし、闇が優斗達を覆う直前、女優斗の前に桃色の光を放つ魔法陣が出現し、光が放たれる! 光は闇を覆い尽くし、やがて視界が見えなくなる。戦況を見守る雄也もあまりの眩しさに目を閉じた。
やがて、周囲が明るくなると、桃色のオーラがなくなり、横たわるリリスを見つめる女優斗が立っていた。慌てて雄也が駆け寄る!
「優斗! 無事か!? やったのか!?」
光に包まれ
「雄也この通りさ、もう大丈夫だ!」
女優斗が笑顔を見せる。金色の瞳がキラキラしている。
「その姿、完全に女だよね。今度から優斗じゃなくて
「いや、やめてくれ……色々ダメージがでかいから……あとせめて
まさかの返答に驚く雄也。
「え? 優斗? 優希って……?」
「え、嗚呼……ルナティだよ、今言ったの!? ちょっとルナティ! もうーーー、俺の身体で遊ぶのやめてくれるー!」
優斗の中にどうやらルナティが居るらしく……さっきの台詞はルナティが優斗の代わりに言ったらしい……まるで自身と会話しているかのような優斗が面白くて、思わず笑みがこぼれる雄也。
「おーけー、じゃあこれからよろしく
「雄也ーー頼むよーー」
泣きそうな女優斗……改め優希ちゃんの瞳がウルウルしていた。
―― ドォォオオオオオン!
その時遠くから
「あ……あれは……ファイリーの
声が聞こえた方を向くと、横たわっていた和馬が上半身を起こしていた。頭を抱えながら渦が起こっている先を見つめている。慌てて雄也が和馬の傍へと向かう。
「和馬! 傷は大丈夫なのか!?」
「嗚呼……お陰様で……なぁ、ファイリーに……俺は斬られたんだよな……」
和馬にとってはやはり衝撃の出来事だったのであろう。まだ先ほど起きた事が信じられないという表情で頭を振っている。
「仕方ないよ、あれはリリスの術だ。今ファイリーはリンクと戦っている。和馬の傷はレイアが回復させてくれたよ」
「くそ! なら、リンクが危ねー。あの技はファイリーのとっておきなんだ。あれは危険すぎる……助けにいかねーと……くっ!」
和馬は起き上がろうとするが、まだ完全に回復出来ていないらしく、起き上がれないでいた。
「ふふふ……私を倒しても……あの
すると、横たわったまま瀕死のリリスが顔だけ起こして嗤っていた。
「それはどういう事?」
優希が瀕死のリリスへ尋ねる。
「あの妖精には……強力な術をかけたの。私が死んでも……あの娘には全て破壊しつくすよう、暗示をかけているわ。自身の身が滅ぶまでね。それに……あなたたちもここから出られないでしょう? ……あなたたちはこれで終わりよ……あはははは……ぐはっ!」
優希が
「さようなら、リリス」
優希が
「優斗! いいのか!? 今のが本当なら、俺たち閉じ込められたんじゃ……」
雄也が心配して優希に声をかけながら駆け寄る。
「いや、ルナティの考えだと大丈夫らしいよ」
優希が笑顔で答える。
「え? 優斗だって? 雄也……そこに居るのは誰だ?」
状況が分からない和馬が雄也に声をかけた。少し離れたところに居るため、よく顔が見えないが、美しい女性であるのは見て分かった。
「ああ……ああーー、
その場をごまかす女優斗。遂に自分で
「え? あ、え……ええーー!? ちょ、優斗……じゃなくて優希ちゃん……何やってるの?」
雄也は突然の出来事に困惑していた。今雄也は棒立ちになっている。そして、自身の胸には、ムニュっとした柔らかい二つの
「雄也……俺もこんな事したくないよ……今から俺の言う通りにして。
和馬は目の前で起きている出来事に混乱していた。まだ夢の続きを見ているのだろうか? ファイリーはリンクと戦っているらしいが、諸悪の根源であるリリスは目の前に居る謎の女性によって倒されてしまっているのだ。しかも、その女性は今、雄也と
「和馬、ちょっとここで待っててくれ! 優希ちゃんと、全て終わらせてくる!」
「和馬君、ここで待っててね」
そういうと雄也と優希は到底人間の速さと思えないスピードで、ファイリーとリンクの元へと向かっていった。一人取り残された和馬は唖然とした顔で二人を見つめていた。
「雄也……リンクという存在がありながら、あれは大丈夫なのか? まぁ、
どこまでが浮気ですか? とアンケートを取りたくなるような光景を見せつけられ、一人置いてきぼりをくらって考え込む和馬。
「あの女性……美人だよな……」
ブラウンヘアーにセクシーな衣装を身に付けた優希という存在を、和馬はその日、目に焼き付けるのであった ――――
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