第45-1話 温泉と再会と(前編)

 ところ変わって再びディーネリア宮殿。エレナ王妃に呼び出されたリンクは宮殿の広間へ向かっていた。


「えー!? 記憶の魔法陣メモリーサークルが使えないー!?」


 雄也達が水霊神社にて、水無瀬先生より妖精界へ転移出来ないという事実を聞かされていたまさにその時、水の都アクアエレナのディーネリア宮殿にて雄也達と全く同じ台詞を放ったのは、水の都アクアエレナの王女、リンク・ルーシーである。


「ええ、残念ながら雄也殿が還った後、記憶の魔法陣メモリーサークルから夢渡りの魔力が感じられなくなったのです。各国へ向けて夢渡りの力ドリームポーターを直接行使してみましたが、夢見の回廊へ渡る事も出来ませんでした。恐らく夢の国ドリームプレミアで何か起きていると考えるべきでしょう」


 そう告げたのは、リンクの母である、エレナ王妃。異変を感じて図書館に居たリンクを呼び出したようだ。


「そんなー、雄也さんに会えないなんてショボーンです……」


 リンクが哀しそうな蒼色の瞳ブルーアイズで王妃を見つめる。


「こちらでも方法は模索してみましょう。夢の国ドリームプレミアには私と同じ四大巫女・・・・十六夜いざよいも居ます。結界があっても内側からなら使役は出来る可能性もありますし、きっと大丈夫ですよ」


 エレナ王妃がリンクをなだめる。


「そうだぜ、悲観する必要はないぜ」

「え? ファイリー!? どうしたの?」


 広間の入口付近から声がしてリンクが振り返ると、ファイリーが入って来るところだった。


「どうせ、『雄也さん』に会えなくてショボーンってなってるんじゃないかと思ってな、あたいが心配して見に来てやったという訳さ。ブリンクとパンジーにも声かけしてるから、ほら行くぜ!」


「え? 行くってどこに?」


 リンクの頭上にはてなマークが出ている。


「どこって息抜きに決まってるだろ? 思い詰めても仕方ないだろ? 行き先は炎の国フレイミディア名物、温泉ホットスポットさ」


「あら、温泉いいですね、王妃様、お嬢様は私が護衛します故、外出許可をお願いします」


 いつの間にかリンクの横に居たレイアが王妃に外出許可を申し出る。


「あ、レイア!? いつの間に!?」


 さっきの事を思い出して、少し顔が赤くなるリンク。


「いいでしょう。その間に夢渡りの力ドリームポーターの件はこちらでも調べておきましょう」

「ありがとうございます、王妃様」


 レイアが片膝をついて王妃にかしずく。


「よし、そうと決まれば温泉ホットスポットに出発だ! あれ、リンクどうした? 顔赤くねーか? 熱でもあるんじゃないか?」


「はわわわわ……ファイリー。な、ななんでもないです! わぁー温泉ホットスポット楽しみですねー! シャキーンです! くまごろう使えばあっという間ですね、よし、早速出発です!」


 さささーっと足早に、広間を出るリンク。


「あの様子だと熱も無さそうですし、大丈夫でしょう」

「そうか? そうだな、気のせいだな」

 

 ファイリーとレイアも後に続くのであった。

 




 という訳で炎の国フレイミディアにある温泉ホットスポットへ到着した妖精達一行。まさに女神達の休息である。


「わーここ貸切ですねー! 凄いです! 本当にシャキーンなのです!」


 リンクがシャキーンと言いながら、ほわわーんとした顔になっている。


「お嬢様、のぼせないようにお気をつけ下さいね」


 レイアさんはぴったりリンクの横についている。それにしても、レイアさんの豊かな双丘はなかなかの破壊力だ。ルナティが居ない今、ここでは間違いなくナンバーワンである。


「凄いねー、温まるねー、気持ちが安らぐよー」

「気持ちよくて眠くなるにゃー」


 こちらは子供サイズの双丘を持ったパンジーとブリンク。パンジーの姿も需要がありそうな気もしますね。ブリンクは猫耳と、しなやかな身体の曲線と毛並が目立ちますね、はい。


「どうだい、炎の国フレイミディア自慢の温泉ホットスポットは! しかも観光客は表の温泉街を使うから、こちらは一部の民しかしらない穴場スポットなんだぜ! 今日は貸切りみたいだな!」


 仁王立ちをしたファイリーさんは、さすが鍛え上げているだけあっていい身体つきをしている。肉体美の中にしっかり双丘もリンクと変わらない位ありますね。


 男子禁制、秘密の花園に女妖精が五名。炎の国フレイミディアの温泉を楽しんでいた。ブリンクなんかはぷかーっと浮かんだまま流れていっている。あれは寝てるよね、きっと。


「気持ちいいにゃー、もう食べられないにゃー」

「おーい、ブリンクーー、大丈夫ーー?」


 流れていくブリンクの様子を見守るパンジー。


「ふふふ……貸切って事は……こんな事も出来る訳だよな!」


 ふいにリンクの後ろから両方の双丘を揉み出すファイリー!


「ひっ、ふえーーファイリーさん、何やってるんですかぁ!?」


 抵抗しようとするリンクだが……。


水舞すいまい蒼眼妖精ブルーアイズはなかなかの豊かな果実をお持ちですねー」


 ファイリーが豊かな果実を揉み揉みしている。


「ファイリー様、それはいけません!」


 ファイリーに何か耳打ちをするレイア。


「ふぇええー、レ、レイア! 助けてーーーファイリーを止めてぇえーー」

「分かりました、お嬢様!」


 レイアがファイリーを止めるのかと思いきや……。


「私もお嬢様の柔らかく実った果実を堪能しとうございます!」


 なんと、レイアが右の果実、ファイリーが左の果実を同時に揉み出すではないか!?


「ひゃぅうう! レ、レイアまでぇええー! やめてー、おかしくなるからー!」


 抵抗虚しく、モミモミされるリンク。


「お嬢様がこんな可愛い顔してなかなかに育った果実をお持ちなのがいけないのです!」

「ほれほれ、ここがいいのかい? リンクー」


 レイアとファイリーの攻撃になす術がないリンク。さらには、果実の突起を刺激されてリンクの身体にビクんと電流が走る。


「ひゃん、こ、これ以上は、おかしくなっちゃうからー! た、たしゅけてぇええー!」



――その時!



 リンクの揉み解された双丘の谷間に挟まっていた何かが、キュイーーンと青白い光を放ち始めたのだ。リンクが普段肌身離さず首飾りのように身につけている、エレナの水鈴すいれいである。


 そう、人間と契約した妖精達はいつでも使役されても大丈夫なように常に使役具サモンファクターを装備している。ファイリーはくれないの腕輪、パンジーは薔薇の指輪ローズリング、ブリンクは光の十字架ライティーロザリオといった具合だ。


 同時にファイリーが身に着けていたくれないの腕輪も赤い光を放ち始める。光を見て、レイアとファイリーの動きが止まる。


「な、これはもしかして!」

「え、マジか!? このタイミングで!」

「ふぇええーー、何かが来ちゃいますぅうーー」


 次の瞬間、リンクとファイリーの姿が温泉ホットスポットから消えたのである。

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