異界の大怪獣リュウギ -幻想世界に転移した獣-《「人外な転生物語」作品》
ミレニあん
00 その名は龍巍
――俺以外は全部敵……敵は倒さなければならない……。
彼はそう信じてやまず、ただ力を振るう。
今、自分に襲い掛かる敵と戦っていた。彼と同じように戦闘に特化した姿をしており、凶暴性を剥き出しにしている。そんな敵を、彼は両腕の武装で薙ぎ払う。
まず手を斬り落とした。だがそれだけでは動きが止まらない。ならばと足を斬り落とし、次に頭部を掻っ切る。
そうして動かなかった所で、彼は咆哮を上げた。文字通り無の空間で、その声が虚しく響き渡る。
彼の名は
彼にとって、自分以外の存在は敵その物である。出くわした所で生死をかけた戦いを繰り広げ、勝った所でまた敵と相まみえる。
さらに龍巍だけではなく、他の者達も自分以外倒すべき敵と思っている。この世界は、そんな者達の為に用意された戦場であった。
――全部敵……敵は……必ず倒す……。
新たな敵を探す為、龍巍は歩き出した。休む暇もない上に、手を抜けばすぐ滅ばされてしまう。
そうして彷徨っていると、すぐに敵が見つかった。今度は首だけになった個体で、背後から四本の突起物を生やしている。
龍巍からしても奇妙で異質……得体の知れない存在だ。その敵がおぞましい咆哮を上げながら、彼へと迫ってきている。
――……でも全て倒した後、俺はどうなる……?
しかし同時に、その先の事が気になっていた。今まで生き残る為に戦ってきた龍巍だが、その先の事は全く考えていなかったのである。
幸福なのか、それとも虚無なのか。しかし今は生死をかけた争いをしている為、そんな事を考えている場合ではない。
――……!?
だがその時、龍巍は違和感を感じた。そして何があったのかすぐに分かった。
自分の身体が沈んでいくのを感じたのである。
突然の事態に戸惑うが、何とか這い上がろうとする。しかし全く脱出する事が出来ず、そのまま身体が埋もれてしまう。
最後のあがきとして腕を伸ばしたが、それもまた消えてしまった……。
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「……それが、俺が今までに起こった出来事だ」
今、一人の青年がそう口にしていた。
短くも長くもない灰色の髪を持ち、甘い美貌を持った男。華奢な身体には黒い衣装が纏っている。
その彼が、目の前にいる少女へと向き合っていた。
「……そう、そんな事があったの……ちょっと信じられないけど……」
青年の話を聞いて、少女は困惑した表情をしている。
彼から告げた経緯に、現実感が感じられなかったのだろう。しかし青年にとっては、そんな事はどうでもよかった。
「教えてくれ……この世界に俺にとっての『敵』がいるのか? 俺は……何を倒せばいい?」
この青年は龍巍。
人間となった彼は、未だ敵を求めていたのだ。
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