プロヴァンスの空はいつも青い 3

 おとなしく隣に座った私の方を、少女は振り向く。

その瞬間、絹の様なプラチナの長い髪が、私の頬と首筋をサラサラと撫でる。

なんという快い感触。

白く透ける様な姉指で、少女はすっと私のうなじを悪戯いたずらっぽくなぞる。

脊髄を突き抜ける、悩ましげな疼き。

やっぱりこの少女はただものじゃない。

いったいこれまで幾人の男を、こんな艶っぽい瞳で見詰めたのだろうか。

そして私も、それを拒む事ができない。

私を受け入れる少女の瞳に目がくらみ、情動のまま少女の腰に腕を回し、ぐいと引き寄せた。


「あ」


小さな声を残して、少女は私にしなだれかかり、瞳を閉じる。

それがサインだったかの様に、私は唇を重ねた。

私の首に腕を回し、短い金色の巻毛を、少女はまさぐる様に愛撫しながら、たくみに舌を絡めてきては、私をもっと奥へと招き入れる。

こんな狭いロッキングチェアでは、愛しあうのに窮屈だ。

私は彼女を抱え上げるとベッドに運び、そのまま覆いかぶさっていった。


 少女の売る『花』は、期待していた以上になまめかしい。

少女は私のシャツのボタンをはずし、露になった胸元に、震える様に舌を這わせてゆく。

それは、男の私でさえも、全身の神経を虜にしてしまう程の快感。

私も夢中で少女を愛撫する。

唇にフレンチ・キス。

うなじにはニップ・キス。

私の指と唇は、少女のまだ固い冬の蕾の様な胸に達し、小さな果実を貪る様にうごめかせる。


「ん… んう」


少女の唇から吐息と声が漏れ、頬が次第に紅潮し、乱れたワンピースの裾を恥ずかしげに押さえる。

その様子がまた扇情的。

征服心を掻き立てられた私は、少女の服の胸元をはだけると、胸から脇、腹、さらにはスカートの中の滑らかな脚へと攻め込んでいく。


昼下がりのプロヴァンス。

開け放たれた窓からサンサンと降り注ぐ陽光の下で、私と少女はまるで、溶け合う様に重なっていった。


 その時ふと、予想していなかった感触があった。


「えっ?!」


まさか?

私は確認するかの様にもう一度、そこに手を触れる。

間違いない!


「きっ… 君は…」

「純情な旅行者さん。こういう相手は初めてなのね?」

「君は、男だったのか!」

「愛しあうのに性別なんて、関係ないでしょう」

「ある! ある! 『愛しあう』なんて言葉は、男と女の間にしか使わないものだ!」

「古いのね。このフランスじゃ、男同士の結婚だってできるっていうのに?」


軽く微笑みを浮かべ、うっとりとした眼差しで、『少年』は私への愛撫を続けた。

私は拒もうとしたが、そのあまりに美しいアクアマリンの瞳で見詰められていては、抗う気力がなくなってしまう。


「ねえ。そんなに嫌がらないでよ。このニースの街じゃ、ぼくより上手い男娼は、他にいないよ。素敵な思い出を作ってあげる。北の国から来た旅行者さんのために」


つづく

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