散りゆく花びらとこの空に微笑みを

プル・メープル

プロローグ

私はずっとここにいる。


生まれた時からずっと……。


母の顔も、父の顔も知らず、


この場所で永遠の時を重ねる。


失うものはない。得るものもない。


ただ、平和が当たり前よりも安価になった場所に私は生きている。


ここにいるのは私の姉と妹だけ。


他のみんなは知らない。


いや、知りたくなかっただけかもしれない。


最近はそんな気がする。


ただ、私にとって、記憶なんて一種の娯楽なんだって、お姉様は言っていた。


私たちのような、永遠を持つ嫌われ者にとって、他の人なんて一時の点でしかないって、言ってた。


だから、私は思い出さないように、忘れてしまえるように、今日も唄を読む。


全てを始めさせる唄を……。


この世界のどこかにいる、他の人まで聞こえるように。


私は今日も『始まりの唄』を読む。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る