あの頃の私への独り言

礫瀬杏珠

第1話 ガラケーが出てきた。

私は片付けられない女である。

机の周りは常に何かが積まれ、小物の類はその辺にあった箱……例えば部活の先生がくれたお茶碗が入っていた箱、とか。技術の時間に作ったラジオが入っていた箱、とか。


それに突っ込んで、何を入れたのか忘れてしまうのだ。


私は今、高校を卒業して家にて絶賛引きこもり中のJKである。Twitterを見てもインスタを見ても友人達がどこかに出掛けているようなものばかり。ケッ。私と言えばどこに出掛ける金銭的余裕も無く家のベッドの上でTwitterとYouTubeを行ったり来たりするお仕事をしていた。


春からは大学生である。課題も出ている。しかし私はそれに対して全くもってやる気が出ないのだった。


仕方なく机に向かい、まず積まれたまま恐らく受験戦争を乗り越えた人間のものと比べるといささか綺麗な英語の参考書と問題集を開いた。あー、ダメだ。完全に記憶から消えてる。


推薦で大学に受かってからというもの、授業も惰性で受けていた。自宅学習期間は提出するべき課題のみをこなし、遊んでいた。


都内に繰り出しては友人と焼肉だのカラオケだのVRだの映画鑑賞に観劇に……。


提出課題ではないもののテストが控えているこの英語っていうもの。私が最も苦手な教科である。


苦手な科目だって、ずっと学び続けていればいつか得意になる日が来るとそう信じてはや6年。ならなかった。嫌いなものは嫌いなのだ。英語なんてテスト前の一夜漬けで問題文と答えを暗記して本番でいつも50点代を取り、先生には「貴方ならもっと取れると思う」と2年間ずっと言われ続けていた。


問題は目の前の記憶から消えてる奴だ。幸いにも単語は覚えている。うろ覚えだけども。だから入学式まであと2週間を切った今になって英語の勉強をしているのである。


無駄な努力かもしれないが、0点をとるよりはマシだろう。


でも、流石に飽きるのだ。


そういう訳で、私は机の上に積まれた例の技術の時間に作ったラジオが入っていた箱を何気なしに開けた。


そしたら、出てきたのだ。私が中一の頃から高校に入るまでずっと仲良しだった創作の友が。


これは、私が英語をやりたくない現実逃避に書く、ひとつの物語である。

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