第32話 崩壊の始まり 後編
新しいスマホに変えたのですが小説が移行出来なかったので完成してる所までの小説を載せようと思いました。
午後18:00。
龍護はラジネスカンパニー日本支部の建設現場に来ていた。
とは言ってもほぼ9割方完成しているのか、あちらこちらの窓に半透明のビニールが貼られていたりしている。
今日の仕事は終わったのか既に従業員は1人もいない。
龍護は辺りに人がいないかを確認して浮遊魔法で屋上に上り、換気口から侵入する。
細く、四角いパイプの中を渡っていると目線の先に薄暗く光る線が見えた。
下からの光が漏れているのだ。
金網を叩いて床に落とし、フロアに降り立つ。
「・・・防犯装置とか作動しない・・・よな・・・?」
後で何か言われてもスヴェンさんに弁解してもらうか・・・と考え、恵美を探す。
すると何処からか何かを揺らす音が聞こえた。
(誰かいるのか・・・?)
足音を立てないようにゆっくりと近付く。
その物音は龍護が近付く度に大きくなる。
どうやらその音は隣の部屋から聞こえているようだ。
息を殺して壁から顔だけをゆっくりと覗かせるとそこには目と口を塞がれて、手足を椅子に縛り付けられた恵美がいた。
「姉貴!!!!」
龍護は恵美に駆け寄った。
拘束されている手足を解こうとしたが金属製のワイヤーで拘束されている為、手で切る事が出来ない。
猿轡も外すにはダイヤル式で4桁の暗証番号が必要みたいだが分からない。
必死に恵美の拘束を解く方法を考える龍護に恵美が唸り声で呼んでいる。
龍護が恵美を見るとフルフルと首を横に振り、向こうへと顎を向ける。
恐らく『私の事はいいから逃げろ』と言いたいのだろう。
だが龍護にとって恵美は唯一の家族。
そう簡単に手放せるものではない。
すると龍護のスマホに着信が入る。
相手は友姫だった。
どうしたのだろう?と思いながら通話状態にして耳に当てる。
「おう、どうした?」
『リューゴ。なんかメールが来てそのままリューゴに転送するように指示されてるんだけど・・・』
「はぁ?」
とにかく送るね?と友姫は通話を切って龍護にメールを送る。
少ししてメールが来た。
メールを開いて中を確認する。
【友姫・S・ラジネスの両親の命を助ける手紙】
解除コード
【bdkwy7831】
起動コード
【gukde2257】
(・・・あれ?)
龍護はこのコードに見覚えがあった。
まさか・・・と思い、自身のスマホを確認する。
解除コード
【gukde2257】
起動コード
【bdkwy7831】
そう、友姫の両親の解除コードと起動コード、そして義姉の解除コードと起動コードが逆さまなのだ。
つまり
どちらかを見捨てなければならない。
「糞野郎が!!!!」
ゴッ!!!!と思い切り自身の拳を床に叩き付ける。
『リューゴ、一旦私のお父さんとお母さんを救出す』
「待て!!!!そっちの解除コードを打ち込むと俺の義姉の罠が起動しちまう!」
『え・・・!?』
それってどういう・・・!?と電話越しに聞こえる友姫の声も動揺が見えた。
だが龍護からすればそれどころでは無い。
すぐに何かしらの方法を考え、爆弾の解除を試みないと最悪の場合、両方を失う事になる。
「どうする・・・!!!!考えろ考えろ考えろ・・・!!!!何かしらの手段はある筈だ!」
龍護はスマホの通話状態をそのままにして義姉が座っている椅子の下にある爆弾本体を見付けた。
爆弾は外されないようにする為か、爆弾本体と床をビニールテープで固定している。
少しやりづらいが龍護は姿勢を低くして椅子の中に潜り込む。
爆弾の上にはスマホの画面くらいのタッチパネルがあり、そこには00:00という、残り時間を表示する欄とその下に【起爆】、【解除】と書かれたボタンが表示されていた。
急いで解除ボタンを押した。
するとパスワードの入力画面に切り替わる。
友姫の焦った声がスマホから聞こえ、そっちの爆弾の画面で変化はあったか?と聞くと勝手に起爆コードを打ち込む画面に切り替わったらしい。
やはりこの2つの爆弾は連動していて龍護の側の爆弾を解除しようとすると遠隔操作によって友姫の方の爆弾の起爆コードが同時に打ち込まれるようだ。
ここで龍護が解除コードを打ち込めば義姉は助かるが友姫の両親は助からない。
逆も同じで友姫が両親の爆弾の解除コードを打つと義姉の爆弾が起爆する。
必死に打つ手を考えるが龍護はプログラミングや爆弾処理の経験が無い。
ただ分かってるのは制限時間があるからこの爆弾は時限爆弾という事だけである。
だが、その時に気付いた。
(そういえば時限爆弾って・・・)
時限爆弾の起爆を解除する方法は2つある。
1つは映画でよくある演出の”コードを切る”という方法だ。
そしてもう1つは───液体窒素で通電を一時的に遮断し、凍ってる隙に爆弾を被害を被らない所まで持っていく方法だ。
液体窒素は食品製造における瞬間冷凍の他に建設工事における漏水防止にも使われている。
ここはまだ建設途中の工場。
可能性は低いがその液体窒素が少なからず残っている可能性に賭けた。
「友姫!お前は全力で魔法を使ってその爆弾を凍らせてくれ!!!!俺は別の方法を探す!!!!」
電話から分かった!という声が聞こえたのを確認して龍護は走った。
「工事中」の看板を無視して様々な所を走って探す。
そして数分走って短い灰色のガスボンベを見付けた。
龍護はなって駆け寄って軽く揺らしてみる。
するとチャプチャプという液体の音が聞こえた。
「よし行ける!」
台車を運んで来てボンベを乗せ、姉の元に急いだ。
◇◆◇◆◇◆
「姉貴!!!!」
ようやく辿り着いたと同時にボンベの蓋を開け、試しに少し零してみる。
すると少し傾けた時に中の液体が床に零れ、蒸発した。
「…よし…」
龍護は慎重に、かつ、正確に時限爆弾へと液体窒素を掛ける。
そして全体的に真っ白になった所で爆弾を揺らしてみると凍ったビニールテープがバキバキと音を鳴らして割れていき、遂に爆弾から離れた。
「後は…」
下手に刺激を与えないようにゆっくり時限爆弾を引き抜いていく。
その際も姉の恵美はんー!んー!と龍護に何かを伝えようとしている。
「大丈夫だ。後はこれを抜き取って捨てれば…!」
もう少しで引っ張り出せる。
だからこそ龍護は警戒しなければいけなかった。
なぜ、時計の表示が00:00だったのか
なぜ、ビニールテープで床と固定されていたのか
「…ん?」
床の一部に穴が空いているのを見付けた。
そこからは一本の光が上に伸びている。
気になって椅子の裏を見てみるとそこには光感知センサーのような物があった。
そしてピッピッピッピッ…と何かのカウントダウンが始まる。
「え……?」
時限爆弾を投げ捨ててその穴の中を見ると
もう1つの爆弾がカウントダウンを始めていた。
「え!?ちょっ…!?なんで!?」
するとその行動を見ていたかのように電話が鳴る。
龍護は通話状態にした。
「おいクズ野郎!何しやがった!?」
『おー怖い怖い…ただ君は気付くべきだったんだよ。床にあった時限爆弾がなぜ00:00表示だったのか、なんでびっちりとビニールテープで爆弾を固定していたのか…それを推測しなかった君が悪いんじゃないのかね?』
「テメェ…!!!!」
心底イラついている龍護に謎の声は囃し立てる。
『ほら、早く逃げないと君も君のガールフレンドも一緒にあの世行きだぞ?』
「…は?」
それではまた…な?と電話が切られる。
その後すぐに友姫から着信があった。
『リューゴお願い!!!!お父さんとお母さんを助けて!!!!爆弾のカウントダウンが始まってる!!!!』
「…」
その言葉で全てを理解した。
こちらの床にあった爆弾は偽物であり、本物は床の中にあった事。
そして龍護が解除しようとしていた事。
その全てが謎の人物にとっては想定の範囲内だったのだ。
「……」
姉を助けられない事を半ば知ってスマホが床に落ちる。
終わった
全て奴の手の上だったんだ
だがその時、龍護が何かに吹き飛ばされる。
姉を顔を見ると『アンタは生きな。馬鹿義弟』と言わんばかりの顔をした姉が笑みを浮かべながら涙を流し、龍護を見ていた。
「姉…貴…」
窓ガラスを割ったと同時に白い閃光が床の中から現れ、姉と建物を覆う。
ドォン……!!!!
龍護は地面に転げ、建物を見た。
2階は完全に火が回っている。
恐らく、いや確実に姉は亡くなっただろう…
「姉貴…」
いつの間にか涙が溢れていた。
自分を育ててくれた人を助ける事が出来なかった。
そんな無力な自分を呪った。
「姉貴イイィィィィイイイイ!!!!!!!!!!!!」
龍護は天を見上げ、喉が潰れんばかりに叫んだ。
23:24。
2箇所の工場で爆発が起きた。
そしてそれと同時にラジネスカンパニーの社長であるスヴェン・S・ラジネスとその妻である沙弥・S・ラジネス、もう一方の工場では奪木恵美の焼死体が発見された。
友姫は咄嗟にスヴェンが魔力の弾を撃ったのか、外に吹き飛ばされて全身を強打。
龍護も事件現場にいたとして事情聴取を受ける事になった。
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