七天龍の遊戯
JAIL
第1話 prologue
『つまりお前は龍化での再戦とそれぞれの龍の所持者の情報公開を望むと』
「あぁ、出来るんだろ?」
『我々なら可能だ』
『では与えよう』
1人の男性に黒い靄が吸い込まれ、1枚の紙が目の前に現れる。
男は一通り目を通すが途端に顔を顰める。
「1人足りないじゃないか・・・まぁ炙り出すのも悪くないか」
『約束は守った』
『後は』
『それを使って楽しませろ』
「勿論だ」
男性はその場から消え、7つの紫色の人型の靄が残る。
『再び』
『始まる』
『殺し合う』
『遊戯が』
『だが足りない』
『参加者だろう?』
『この者でいいだろう』
靄達が囲む水晶には雨の中、車を走らせているスーツ姿の男性が映っていた。
◇◆◇◆◇◆
スーツを着た1人の青年が車に乗って雨が降っている海沿いの道を走っている。
彼の名は
彼は大学4年生で先程、とある企業説明会を終えた所だ。
「試験かぁ~・・・個人的には設計関連の方に行きたかったけどな・・・」
今回の説明会で企業側の求めていた業種と、どうやら本人が希望していた業種は違っていたようだ。
「ま、滑り止めにしておくかな・・・」
そう言いながら雨足が早くなったのを確認してワイパーの速度を上げた。
今通っている場所はかなり見通しが悪く、前から来る車に気付けるか気付けないかのレベルである為“速度を15km以下に落とせ“の意味を示す標識が多い。
祐輔はまだ初心者マークを付けている為、安全にと速度を15km以下に落として走らせている。
だが突然、速度メーターが20kmを超え始め、スピードが上がり始める。
「は!?なんだこれ!?」
祐輔は慌ててブレーキペダルを何度も踏み込む。
だが全く効かない。
彼の乗っている車は親から借りているもので先月買ったばかりだ。
なのに故障してしまった。
「嘘だろ!?こんな時に故障かよ!?」
前方から大型のトラックが走ってきた。
だが未だにブレーキは効かず、祐輔の乗る車の速度は50kmを軽く超えていた。
そして今日は雨で道路は濡れていて滑りやすくなっている。
そんな状況でハンドルを思い切り切ったらコントロールはもう不可能。
運良くトラックとの接触は免れたものの、案の定操縦は不可能になった。
そして目の前に迫るのは白いガードレール。
ゴシャッ────────!!!!
車は思い切りガードレールに衝突し、突き破る。
下は崖で20mはあった。
祐輔を乗せた車はフロントを下に、垂直になって落ちていく。
そして────────地面に激突したと同時に爆発した。
祐輔本人も自分は死ぬんだな・・・と確信できるほど車はひしゃげ、何よりも折れた太い木の枝が祐輔を胸の真ん中を貫いていた。
トラックの運転手が咄嗟に警察を呼んだが炎と黒煙が立ち込めて既に間に合わないことは目に見えている。
祐輔は22歳という若さでこの世を去った。
◇◆◇◆◇◆
気が付くと真っ白な空間に立っていた。
そして祐輔の目の前には黒いローブを着た老人が錫杖を持って立っている。
『お前には転生をしてもらう』
「・・・は?」
祐輔は突然の事に固まってしまう。
それもそうだろう。
初対面の老人に転生をしてもらうと言われたのだから。
『これをお前に授けておく』
そう言って老人は白く光る球体を浮遊させ、祐輔の体内に埋め込んだ。
「いや勝手な事をしないでもらえます?特典とかいら────」
『貴様に拒否権は無い』
有無を言わさずに老人は錫杖を天に掲げる。
すると祐輔の足元に魔法陣が現れた。
『さらばだ。せいぜい楽しませてくれ』
「おいっ!待てって!人の話をき────」
全てを言い切る前に祐輔は転生させられた。
◇◆◇◆◇◆
目を開けると祠の前に無造作に置かれていた。
そして祐輔はマジかよ・・・と心の中で呟く。
赤ん坊にまで自分の身体は戻り、綺麗な布に包まれていた。
(これ・・・本当に異世界でファンタジーとかなら魔物とか来てアウトじゃん・・・)
どうするか・・・と悩んでいた時だった。
「あれ?」
向こうから女の子の声が聞こえた。
そちらを見てみると赤い髪を後ろで1つに纏めた小さな女の子が祐輔を見ていた。
一先ず助かった・・・と祐輔は安堵する。
女の子は赤ん坊に近付き、ヒョイと持ち上げる。
「君、お父さんとお母さんは?」
祐輔は話そうとしたが出る声はあうあー等、言葉にすらなっていない。
「う~ん・・・どうしよう・・・でもここに置いておいたら死んじゃうよね・・・」
女の子は放っておく訳にもいかなかったのか、祐輔を持ち帰ることにした。
◇◆◇◆◇◆
女の子に抱えられながら私は
森を抜けると木造建築の古そうな家が並ぶ所に着いた。
そしてその1つに向かって歩いていく。
その家の看板には【
恐らく家名だろう。
「ただいま~!おばーちゃん!みてみてー!赤ちゃんがいたよ~!」
「赤ちゃんが?」
短い白髪の老婆が椅子に座って編み物をしていたが、女の子が赤ちゃんを拾ってきたと聞いて手を止める。
「おやまあ、本当だ」
「この子・・・大丈夫かな?」
女の子が心配そうに祐輔を見ている。
本人は安心感と疲れから寝てしまっていた。
「仕方ない・・・血縁者が見付かるまで私と恵美で面倒を見ましょう」
「ほんと!?私、弟欲しかったんだよね!・・・そういえばこの子の名前知らないな・・・」
「可哀想に・・・なら名前を与えておきましょうか・・・」
「本当!?ね?ね?私が名前決めていい?」
恵美は余程自分に弟が出来た事が嬉しいのか祐輔に命名したいと老婆に懇願してくる。
老婆もいいよ。と優しく言って恵美は悩み始めた。
「
こうして蒼葉祐輔改め、
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