林檎

目の前に林檎があった

熟したそれは今が食べごろだ

ところで隣に青々しい林檎があった

まだ若い食べれない林檎だ


放置すれば腐るだけ

放置すれば熟すだけ


どちらを見つめても選べない

どちらが世界か分からないからだ

頭がこんがらる、頭が正常に働かない

いや、私は正常なのだろうか


目の前の林檎は、本当に林檎なのだろうか

目の錯覚ではないだろうか

疲れ果てた私が幻覚を見ているだけだったりしないだろうか


美味しいまま食べてしまいたいのに擬人暗鬼で

手を出せぬ、手を出せば呪われそうなんだ

林檎の欠片を喉に詰まらせて死んでしまいそうで

王子さまは現れない

ああ、私は自殺なんてできないさ

母に殺されたって後悔しないさ


だからせめて、まだ青い林檎のまま未熟な私を握りつぶしてはくれないか

だれか、だれか、だれか、だれか、ありがとう

私は私を殺したよ

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