斬られ役、蜥蜴(とかげ)を迎え撃つ・テイク2
55-①
〔キドウ カンリョウ〕
リョエンの槍が電子音声っぽい声を発した。
それを見たイットー・リョーダンが驚きの声を上げる。
〔お、おい武光……や、槍が……喋っているぞ!? 何と奇妙な光景だ……〕
「いや、お前が言うなや」
サリヤは、銀色に光る槍を見てリョエンに問うた。
「リョエン、この槍は一体……?」
「私は今まで、ただ引きこもっていたわけじゃない。私は……どうしてもキサンに勝ちたくて、ある事を研究していたのさ。そしてこれがその研究の成果だよ」
「研究って一体……? と言うか、槍や剣じゃリザードマンに有効打は与えられないわよ!?」
「説明は後だ、今はとにかく守りを固めて残りのリザードマンを迎撃──」
「リョエン先生ーっ、一大事ですーっ!!」
その時、守備隊の兵士が大慌てで武光達の所に走ってきた。
「どうしたのです!?」
「対リザードマン用に第一倉庫に備蓄してあった火矢が何者かに奪われました!!」
「何ですって!?」
「今、大至急第二倉庫に予備の火矢を取りに行かせておりますが……いかんせん火矢の数が足りません」
「くっ、ここは再び打って出て、迎撃態勢が整うまで、少しでも敵を足止めするしかありませんね……私が行きましょう」
「わ、私も行くわ」
サリヤが名乗りを上げたが、リョエンはそれを制止した。
「ダメだ、私に万が一の事があった時は君の火術が最後の砦になる。少しでも休んで体力を回復させておくんだ……行こう、武光君!!」
「お……俺ですか!?」
「仕方ないだろう、今リザードマンに有効打を与えられるのは私と君の二人しかいないのだから」
「ま、マジでやるんすか……」
「ええ」
「……どっちかって言うと俺も最後の砦の方がええかなー、なんて……」
「武光君、リョエンを……頼んだわよ」
「えっ……ちょっ、サリヤさん!? 俺行く事決定なんですか!? う……そ、そんな目で見んとってくださいよー……ああ、もう!! わっ、分かりましたよ……行きますよっ!!」
「行こう、武光君!!」
「ちくしょーーー!! 怖えーーー!!」
二人は迫り来るリザードマンを迎え討つべく駆け出した……が。
「………………あのー、先生?」
「な、何だい?」
「……全然進んでませんけど」
「いやぁ、この槍……かなり重くてね……ふぅ」
〔ガンバレ ワガ アルジ〕
「そんなわけないでしょう、ナジミでも先生の家からここまで何とか運んで来れたんですよ!? ……ちょっと失礼」
武光はおもむろにリョエンに近付き、リョエンの服の
「……細っ!? ええー……ちょっ、先生めちゃくちゃ腕細いですやん!!」
中から出てきた、女性と見間違いそうな細腕を見て、サリヤは大きな溜め息を
「リョエン……貴方ちゃんと食事は
「う、うん……パンとか」
「運動は?」
「……してない」
「睡眠は?」
「す、睡眠は毎日ちゃんと取っていたさ……三時間くらい」
「そりゃこんな細腕にもなるわ!! 今度……ちゃんとした料理を作ってあげるから……必ず無事に戻ってきて、いいわね?」
リョエンは、照れ臭そうに笑いながら、サリヤに言った。
「……サリヤ、私は……目玉焼きは半熟派だぞ」
「……うん、知ってる」
武光も、照れ臭そうに笑いながら、サリヤに言った。
「……サリヤさん、俺は……牛丼はツユギリ派です」
「……うん、それは知らない」
サリヤは武光の肩に手を置いた。
「武光君、悪いんだけど……この槍運んであげてもらっても良いかな?」
「任しといて下さい!! こう見えても俺は、武田信玄、上杉謙信、織田信長、真田幸村と、幾多の名将の下で槍足軽(の役)として戦ってきた男ですから!!」
武光はリョエンから機槍テンガイを受け取ると、小脇に抱えた。
「行こう、武光君!!」
「よっしゃ……テイク2じゃあああああああああ!!」
守備隊が迎撃態勢を整える為の時間を稼ぐべく、二人は再び、西口から出撃した。
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