魔将、爆ぜる


 42ー①


“ばんっっっ!!”


「おわぁぁぁっ!?」


 武光がイットー・リョーダンをコウカツの胸に突き立てた瞬間、コウカツの肉体が凄まじい勢いでぜた。


「ぐ……ぅぅぅ……」


 衝撃で吹っ飛ばされ、防塁に勢いよく叩きつけられた武光はうめき声を上げた。


「ククク………アーハッハッハッハ!!」


 頭上から、声が降ってきた。


 全身を襲う激痛に耐えながら、武光が声のした方に視線を向けると……倒したはずのコウカツが空中から武光を見下ろしていた。


「ちょっ、おま……何でやねん……!?」

「フン、貴様が剣を突き立てたのは、私の魔力によって生み出された《爆発傀儡ばくはつくぐつ》よ」

「お前……そんな卑怯な真似まねするとか……恥ずかしくないんかコラァ!! 恥を知れ、恥をー!!」

「よくその台詞せりふを吐けたな貴様!? まぁ……良い、貴様らは皆殺しだ!!」


 そう言うと、コウカツは人差し指の先から赤い光線を放った。


 逃げる事も、防ぐ事も出来ない。武光は思わず目をつぶったが、撃ち抜かれたのは隣にいた味方だった。コウカツがナジミ軍の男達を次々とほうむってゆく。


「ククク……そうあわてるな唐観武光、貴様は一番最後だ、自分の番を震えて待っていろ!!」


 また一人、味方が殺られた。


「ぐ……くそっ!!」


 イットー・リョーダンを杖代わりにして何とか立ち上がったものの、足元がふらつき、立っているのがやっとだ。

 そして、武光が立ち上がろうとしている間にも味方は次々とたおされ、気づけばその場に立っているのは、武光ただ一人となっていた。


「さぁ、いよいよ貴様の番だ……貴様には特別熱くて、痛くて、苦しいのをくれてやる!!」


 コウカツが人差し指を武光に向けた。コウカツの指先に凶々まがまがしい赤い光が宿る。


(くそ……何とか立ったけど、あんな高い所におられたら打つ手無しやんけ……いや、一つだけある!! でも、やれるんか……? いや、やらなあかん……今ここでコイツを倒さんかったら街の皆が殺されてまう!!)


 武光はイットー・リョーダンを地面に突き立てると、上空のコウカツを見据みすえ、腰を落として、深く息を吐いた。


「目覚めろぉぉぉぉぉっ!! 俺の中の神の力よぉぉぉぉぉっ!! か……み……か……ぜ……波ァァァァァ!!」


 武光は、上空のコウカツに向けて両手を勢い良く突き出した。


“……ぷす〜っ”


「ハイ死んだぁぁぁぁぁ!?」


 武光の手から出たのは……またしても、すかしっみたいなそよ風だった。


(あかーーーん、全然あかーーーん!!)


 武光は、死を覚悟した。


「くたばれぇぇぇっ!! 唐観武み──」

「《光術こうじゅつ》……《斬魔輝刃ざんまきじん》!!」

「ギャアッ!?」


 コウカツが光線を放とうとしたまさにその時、突如として飛来した影が、コウカツを真っ二つに切断した。両断されたコウカツの体が空中で爆発する。


「あ……あれはっ!?」


 コウカツを倒した影が武光の前に降り立った。


「良かった……何とか間に合った……」

「ヴァ……ヴァっさぁぁぁぁぁん!?」


 思わぬ援軍に、武光は素っ頓狂な声を上げた。


「リヴァル戦士団……参上!!」

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