第9話

ガイドブックには、パーク中の観光スポットやアクティビティについて書かれていた。


パーク中央にそびえる城、パークの中のショッピング街、ジャパリカフェなる喫茶店、アニマルガールによるスカイダイビング愛好会 etc…


私は、気になったものにチェックを入れつつ、ガイドを読み進めた。

ガイドの巻末には、「パークイベントカレンダー」という表が掲載されていた。

それによると、今開催されているのは…「ジャパリパーク大ゲージツ祭@ナカベチホー」

なんだそれ?

ガイドの説明によると、「パーク中のアーティストが参加する、最大級のアートイベント!

あの伝説のペンギンアイドル、PIPのライブステージなど、企画が目白押し!」らしい。

要するに、アニマルガール参加の文化祭的な…?

面白そうだ。開催期間は明後日までか。じゃあ明日にでも行こうか。


「ソラ、明日はこれに…」


ソラはもう眠っていた。今日はちゃんとベッドで寝ている。

そっとしておこう。今日も色々あって疲れただろう。

さて、私もそろそろ寝るか。

あ、寝る場所が無いんだった…


結局、昨日は部屋に備え付けの机に突っ伏して寝た。腰が痛い。


まだ日はあるが、1度チェックアウトしてまた別のホテルのツインの部屋を取ろうか…


朝9時半。ナカベチホーまではパークセントラルから電車で1時間らしい。

観光するのに妥当な時間に到着するかな。

ジャパリ鉄道中央駅から切符を買う。ソラの分はどの切符を買ったらいいのかと考えたが、ちゃんと券売機に「アニマルガール」の欄があった。さすがだな。


無事にナヤゴ駅までついた。ナカベチホーのメインストリートがある駅らしい。

駅の外に出ると、「大ゲージツ祭」の幟があちこちに立っている。

メインストリート内にはただ店があるだけで、それらしきものはなかったが、通りを出てすぐのサファリエリアに出ると、多くの人やアニマルガールで賑わっていた。


ところどころに人集りもできている。その中の1つを覗いてみる。


「負けませんよ…ビーバーさん…」

「アリツさん…勝つのはオレっちっスよ!」


黄色い髪の鳥の子と、全体的に褐色の服と髪の毛の子がにらみ合っていた。会話の内容から察するに後者がビーバーなのかな?

誰かが言った「始め!」の言葉とともに、2人はそれぞれ持っていた丸太を削り始めた。

鳥の子の方はハンマーとノミを使い、ビーバー(仮)の方は彫刻刀で削っている。

みるみるうちに彫刻が出来上がる。ソラも目を丸くして見入っている。

どうやら2人は彫刻の勝負をしているようだ。

うーん、どちらも上手で甲乙つけがたい…と思っていたらソラに手を引かれてまた何処かへ連れて行かれた。

迷子の一件から、ソラは気になるものがあったら私の手を引いて連れて行くようになった。私は学生の時も女性と手を繋いだことなど無かったから緊張するが、一応この子は元ペットな訳だし、リードをつけて歩かせるよりマシだと自分に言い聞かせて心の平穏を保っている。

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