第16話
「で、そいつはこの間戦った人形のジェネリック版というか焼き直し?みたいなものなのね?」
騒動が終わり、リドルが剣を収めて聞いた。視線の先には、全身をいつも以上に強靱な魔力の糸でグルグル巻きにされ、アークを憎たらしげに睨む黒髪の人形がいる。
「性能を低くしたつもりは無いがまあそんなところだ。損傷が激しく、こいつの予備のパーツは無かったからな。何分元々奇跡の産物だ、余ったパーツでしっかり動いたのが不思議なくらいさ」
そう言いながらもアークは自信たっぷりの表情である。自分なら奇跡など起こせて当然とでも言いたげだ。
そんなアークを見て不満げな表情をしている人形が反駁する。
「修復の余地が無くなるほどに壊せと言っただろうが!?何故私が自我を持って動いている!壊せ!!」
「うるさい!長い生の中での最高傑作を壊したままにするはず無いだろうが!文句言わずキリキリ私のために働けゼロ!」
叫んだアークが糸を締め上げる。ぐぇっ、と苦悶の声を上げて、ゼロと呼ばれた人形は黙った。
「同じ顔が喧嘩してるの、滅茶苦茶気持ち悪いわね、どちらか殺すべきじゃない?」
「ゼロってのがそいつの名前なのか?」
「いっぺんに質問をするな、いや、リドルのは答える必要も無いが」
「え?どっちも殺してってこと?」
「わかって言っているな貴様!」
「なぁ、名前の話なんだが」
いつもの調子で罵倒のし合いを始めそうになっていた二人だが、サイグの言葉に冷静さを取り戻し、アークは咳払いをして話題を戻した。
「まぁ、ここまで人間に近いと名前が無いと不便だろうと思ってな。といっても試作零号だからゼロ、という単純なものだが」
「名前ねぇ、そういえばあの竜の子供の名前も決めてなかったわね」
リドルがそう呟くと、サイグの肩(最近はそこが定位置かつお気に入りになっているらしい)に乗っていた竜の子がキュウ、と寂しげに鳴いた。
「研究対象に愛着が湧くのは望むところじゃない。決めるならお前達で勝手に決めてくれ」
「そ、なら勝手に決めるわ、アナタの名前はジルトよ」
「何か由来があるんですか?」
「最初に殺した男の名前だけど?」
「重いわ!?」
竜の赤子もどこかばつの悪そうな表情をして、ニコニコ笑うリドルを見つめていた。
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