微睡の天使
カゲトモ
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「すぅ」
時計の針がシンデレラタイムを指す少し前、とうとう寝落ちてしまった彼が気持ちよさそうな寝息を立てていた。んーこれからどうしようかな・・・。
アイコンタクトを送って来たバイトの斉藤君も“困った”と言う表情だ。まぁ、お客様が少ないからいいのだけれど。
日曜日の夜はお客様の引きが早い。月曜から仕事が始まる人が大半だからだと思う。だから普通のサラリーマンとかOLは大体日が回る前に帰る訳で。でもそこで眠っている彼は明日休みなんだそう。だからこんな時間まで飲んでいるのだ。まだ若いのに。
いや、若いからこそまだ自分の飲める量が分からないのかもしれない“ここまで来たらオーバー”ってラインが分からないから、店の中で眠ってしまったりするのだろう。騒いだりしないだけ良いんだけど。
さっきまで泣きそうな顔をして話していたと言うのに、気づいたらすっかりと目蓋を閉じてしまっていた。
「マリカ君、マリカ君」
肩を優しく揺すっても少しも起きる気配がない。
「マリカ君ッ」
ちょっと強めに、頭が揺れるくらい揺すっても長い睫ひとつ動かない。
うーん、どうしようかな。とりあえずはこのまま閉店まで寝かしておくしかないか・・・劇団の代表番号は確かチラシに書いていたと思うけど、今電話しても絶対に出てもらえないしな。かといって彼の自宅場所も知らないし。マリオ君の番号聞いておくべきだった。マリカ君の先輩であるマリオ君ならきっとどうにかしてくれただろうに。
「ふぅ」
仕方ない、とりあえずは微睡の天使にブランケットを。舞台役者が風邪を引いてはいけないから。
店のカラーと合せたブラウンのブランケットをそっと背中に掛けると「んん」と唇を動かしてまた静かに寝息を立てた。
そんなに悩まなくったっていいのに。
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