012: 2018/03/31 「ちゃんと取っておいてね」/春

「第二ボタン、ちゃんと取っておいてね」

「(……相手をったのは何度目かな)」


卒業式の日、女子校時代にはつが受けた告白は10回になってからは数えていない。

きわめつけに、ありもしない第二ボタンの話をされたのには、流石さすがの初恵も困り果てた。


きっかけは、1年生の時の演劇で、男役をかんぺきにやって見せたことだろうか。

演じること自体は問題無かったし、その後もその役をしていたのは、元々格好つけるのが好きだったから悪くは無かった。

だが、周りに気をつかうのは、時々いききをしないとやっていられなかったのは確かだ。


「初恵さん、ご気分がすぐれないですか?」


だから、こうやってていねいに接してくれるじゆんの存在はありがたい。

少なくとも、男役をやっている必要が無い。

きつてんを始めるときも、自然とおたがいに意見を発して、意見を求めた。


「学生も増えますからね。苦い思い出の一つくらい、感化されますよね」


なあ、と初恵が切り出す。


「カフェモカが飲みたい。苦めにしてくれ」

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