ビックソン

@highline

第1話 やべーやつ

桜の下にあるベンチに座りながら、

今年16になる自分はこう思った


「とにかくセックスがしたい」


まわりは桜を見物しに来た人々でみっちりだ。どこもかしこも賑やかで周りには、産まれたての赤子を抱えた20代後半の家族、そして腰が曲がり乳母車のようなものに体を預けながら手を繋ぎ、歩いてる老夫婦。普通に見ればとても微笑ましい光景であろう。だが、私は思春期の非モテの青年…いや、性年の私にはこの光景はとても耐え難いものなのだ。

皆さん考えて欲しい、ここにいる人たちはほぼ性行為を体験しているのだということを。夜になると男が「やらないか?」というひと言でお祭りが始まるのだ、これは本当に許し難いことである。

ここにいてはストレスが溜まるだけなので帰ろうと呟いたその時、

明らかにホームレスの男が声をかけてきた。

「君、最強になりたくないか?」


明らかに怪しすぎる。

この何年も切ってない髭、どこかで拾ったかのようなジーパンにサンダル、そして季節外れのダウンジャケット。よくアニメで見るようなホームレスの格好である。これには身の危険を察し、愛想笑いを浮かべながら

「すみません、大丈夫です」と言いながら足早にその場を去った。

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