第10話;ジョアンナ2(制裁の幼女アン)
「皇太子の側室のジョアンナ様を我妻にいただきたい」
そうルーナン王子が言ううと
「「「「・・・・え?」」」」
突然の告白に、王と王妃は唖然として、お互いを見た
「恥ずかしながら、一目惚れをしました」
(タイミング悪っ)
ロゼッタは心の中で呟いた
ルナーン王子が王様達に
か弱い女性を、1人で追い出したのかと罵詈雑言の後、
悔しそうにしている姿を見て、
本当に好きなのだと分かって安堵した
「落ち着かれたか?」
王が言ううと
「すみません、取り乱しました。」
「ジョアンナ様はもうロウタン町に着かれると思いますわよ」
「早いな、魔法使ってるのか?」
「風に乗って低空で飛んで行ったみたいですね、街の10km手前でで加護が消し飛びました、盗賊に襲われて、杖の力を使ったみたいですわ」
「え?大丈夫なのか?」
「盗賊は消し飛んでしまったようで、彼女の困惑が感じ取れて、加護が消えました」
「本当に大丈夫なのか?」
「”なんというものをくれたんだ”、という叫びは聞こえましたが・・・」
苦笑いを浮かべるロゼッタ
「王よ、視察は改めて、彼女を迎えに行きたい、よろしいでしょうが?」
「ジョアンナが応と言ううのなら問題ないが、彼女があなたを拒絶するようなら、許可出来ない、その事を心に刻んでおいて頂こう」
皇太子が言った
「必ず口説いて見せます」
そう意気込むルナーン王子だった。
そんなやり取りがされているとも知らないジョアンナは、
目の前で杖を振って、低級の火の魔法を使ったはずなのに、盗賊もろとも、後ろの森も扇状に消し炭になったのを見て、呆然としていた。
人を殺したの、は始めてではないジョアンナだったが、後味は悪かった、
小さい子供が一人森に居れば、誘拐して他国に奴隷に売ろうとしたり、魔石を取っている所を見れば横取りしようと切りかかってくるものは居た、そう言ううものに容赦は必要なかった。
「王様!何なんですかこの杖は!なんていううもの下賜したんですか!」
これは普段、使えないと空間収納に仕舞うジョアンナ
そう、空間収納使えました、精霊2種の混合魔法で、
ロゼッタに言ったらかなり落ち込んでいた、でも倉庫はそのまま使うようだ、倉庫の中身を王宮御用達の鍛冶屋が、勝手に武器の手入れしてくれるので、ロゼッタには倉庫の方が合っているようだった
空を飛ぶ魔法はロゼッタが教えた
基本ジョアンナは魔法しか使わないので、武器は照準を合わせる用の、杖のみで良いので、手入れが簡単。
王から下賜された杖は、下賜された者しか使えず、威力が10倍になる杖で、持ち主が死ぬと自動的に宝物庫に戻る移転魔法がかかられている。
ロウタンの町は昔より随分賑やかになっていた。
「活気があるわね~」
中央広場に行くと中央にビジョンがあった、ニュース放送が流れている。
前にロゼッタが戦闘中継を行なった、投影機と監視眼(アイ)を応用した物で、録画用の魔石も開発されたている。精霊ネットワークを使い、随時新しい情報が各町に行くようになっている。
「ロウタンの町にもあるんだ凄いな」
天気やコマーシャル、ニュース、無料音楽会の様子など一日中ではないが、流れている。
魔物の情報などは冒険者ギルドにあるビジョンに常に流れていて、ピンポイントで魔物討伐が出来ており、被害が殆どなくなっていた、冒険者も魔物を避けて薬草採集が出来たり、ランクも表示されるので自分のレベルに合った魔物討伐が出来、命を落とす冒険者が減った。
人が減らないので、客商売も大いに盛り上がっていた。
お世話になっていた宿屋に行くと、1階はレストランになっていて建物も綺麗に大きくなっていた、お昼時なので大賑わいだった。
レストランのカウンターに座わり、おススメの定食を頼み微(かす)かに見える厨房を見ると
(あっおかみさんだ、元気そうで良かった)
定食が運ばれると、フードを外しフォークを手に取る、そしてお肉を口に運ぶ
「美味しい~」
「おっ・・ありがとよ」
そう言ったのはおかみさんだった
「あんた、どっかで見たことあるね、その見事なピンクブロンドの髪、・・・・アンちゃんかい?」
「おかみさん・・・覚えていてくださったんですか?その節は大変お世話になりました」
軽くお辞儀をする
「お世話なんて・・・殆ど何もしてやれなかったよ」
「いえ、居候させてもらった上に、食事も戴き、パンも端ではなく少しでも柔らかい所を分けてくださり、大所帯で大変なのに、感謝しております。」
「少ししか分けてやれなかったののに、・・・でもどうしたんだい?貴族に引き取られて、皇太子の側室になったて聞いてたのに」
「皇太子を振って来ましたわ・・・なんてね、皇太子殿下は正妃に夢中でね、もともと冒険者が夢だから、お暇(いとま)して来たの、ここで冒険者登録して、懐かしい人達の様子を見たら他の国に行こうと思ってます」
「そうかい、昔から年の割に随分強かったから、すぐ上位冒険者になれそうだね、宿決まってないなら家に泊まっていきな、ただでいいよ」
「宿は是非お願いします、でも、ただなんてとんでもない、ちゃんと払いますよ」
「相変わらず、律儀だね、噂のあんたがまるで違う人みたいでさ、可笑しいと思ってた、今のあんたは昔と一緒だね」
「変な噂、此処まで来てましたか、可笑しかったのは事実かな?皇太子妃のおかげで目が覚めました」
「会えてうれしいよ、ゆっくりしていきな」
にっこり笑ってそう言ううと、おかみさんは奥に行ってしまった
食事を続けていると後ろの方が騒がしくなっていた
「やめてください」
給仕の16歳くらいの女の子が、冒険者か傭兵らしき男に絡まれている
「酌をしろって言っているんだよ」
「そういう事はこのお店ではしておりません、放してください」
「俺らはB級冒険者だぞ、お前らを守っているだ、それぐらいしろ!」
酔っぱらっている冒険者、だれも助けない、B級冒険者に敵う者は駐屯している騎士ぐらいだが、盗賊が出たので街に居ないのが分かっている、それで我が物顔になっているのだ
「やめなさい」
「なんだ?てめぇ・・・おっ上玉じゃねえか、嬢ちゃん、あんたでも良いぜ、朝まで付き合ってもらおうか?」
ジョアンナが給仕の女の子を引き寄せ後ろに庇った
「ここでは、何だから別の所に行きましょう」
「おっ、物分かりがいいじゃないか!」
騒ぎを聞きつけおかみさんが出てくる
「アンちゃん!」
「大丈夫よおかみさん」
にっこりと笑うと男達と表に出て行く、
宿屋の前は広場になっている、けっこう人が往来している中、冒険者とジョアンナは歩いて居た
「さて、ここらでいいかな?」
「?」
「凍れ」
バリバリと冒険者たちが凍っていく
「なっなにしやがる」
身動きが取れなくなった男達
なんだんだと人が集まって来た
宿屋の給仕の女の子やおかみさんも集まって来た
バッチーン
ジョアンナのビンタが冒険者の頬に炸裂
「いい大人がさぁ、昼間っから年端もいかない子の尻を追いかけてさぁ、有りもしない権力振りかざしてさぁ馬鹿じゃない?」
言葉を発している間ビンタは続いていた
バッチーン!バッチーン!バッチーン!
「B級になれたのも、自分が努力したわけじゃないじゃん、周りの取り巻きのおかげじゃない、アンタのレベルD級以下でしょう?一人だけレベル低いの自分でわかってないんでしょう?」
「なんだと!俺は正真正銘Bランクだ」
「冒険者レベルと戦闘レベルが合わないのは知ってるよね?」
バッチーン!バッチーン!バッチーン!
いい加減周りの人たちは、冒険者が可愛そうになってきた
どんどん腫れていく行く冒険者の頬
周りの他の凍っている冒険者はいつ自分の番かと怯えている
「弱い者にしか威張れないくせに、本当にムカつくわ!」
「あれ?」
観客の中が、ざわついて来た
「”制裁の幼女アン”」
「あー!」
「アンちゃんか!?」
(・・・・そんな二つ名ついてたの?私・・・)
「不正を働く冒険者を叩きのめしていた、幼女のアンちゃんか?綺麗になったな?ますます強くなったんじゃないか?貴族様になったんじゃ?」
野次馬が騒ぎ出した
バッチーン!バッチーン!バッチーン!
「ぼうやめっ」
冒険者は泣きだした、ぱんぱんに腫れた頬
鼻血と涙と鼻水、よだれでぐちゃぐちゃの冒険者
「アンちゃんもう許してやったら?」
「おかみさん、でもこいつ謝りませんし・・・」
「・・・ずみません・・・もうじません・・・」
「娘さん、許す?」
そうおかみさんの横にいる給仕の女の子に聞くと頷いた。
ジョアンナは冒険者達を開放した。
寒さと、痛さと恐怖でガタガタと震える冒険者
「いい気味だぜ!騎士の目がない所で散々よわ者いじめしてたろう?」
「そうだそうだ!出て行け!」
わーわーと騒がしくなって、いたたまれなくなった冒険者達は、気絶しているポンポンに腫れあがった顔の冒険者を担いで、広場から消えた
「アンちゃん!戻って来たのか?・・・何もきかねぇ~なぁ皆!アンちゃんの歓迎会しようぜ!」
「それは良い~アンちゃんのおかげで、昔威張ってた冒険者も心入れ替えて今じゃ治安維持に随分貢献してんだ!”制裁の幼女アン”のおかげだ!」
「いや、その二つ名やめようよ・・・」
「俺ん所使いな!」
そう言ったのは、昔ぼったくりをしていた飲み屋の男
「アンちゃんの指導の元、優良飲み屋になって繁盛したんだ、メニューや接客の仕方教えてくれてありがとよ!お礼言おうと思っていたら、もう町には居なくてさ、言えてよかった!」
お祭りのように始まった宴会、
「アンちゃん幾つになった?おっと女性に歳聞くのは失礼か?」
「くすっ・・20歳よもうすぐ21になるわ、おじさん随分と人相良くなったよね」
「覚えていてくれたか、嬉しいね、ちょっと小奇麗にしたら、お客も女も寄ってきて、今じゃ2歳の娘が居るんだぜ」
「幸せそうだね~よかったね」
元ぼったくりの店の男がジョアンナに報告した
次々にジョアンナにお礼に来る町の人たち、
そこで、男爵に連れて行かれる当時のジョアンナの様子を見て、皆心配してくれていたことに本当に感謝した、生気のない目をしていたらしい。
夜遅くまで続いた宴会は落ち着いてきていた
殆どの人は家路に着き、何人かは宴会場で潰れて寝ている
カウンターに座り、その様子を見ているジョアンナ
「あらてめてお帰り、アンちゃん」
「おかみさん・・・」
紅茶をカウンターに置いて
「皆幸せそう・・・」
「この幸せの一部はアンちゃんが、もたらしてくれたものなのは確かだよ」
「そんなことは・・・」
「お母さん心配してた」
「え?」
「妙に大人びているけれど、とても寂しがり屋だし、無茶をするので見守ってやってくれって」
「家賃の足しにしてくれって、母親の形見のブローチを渡されて、そうだ返すよブローチ」
「え?課金して無いんですか?・・・それは母が渡したものですおかみさんの物ですから」
「・・・しょうがないねぇ、まだ預かって置くよ、アンちゃんがまたいい人見つけて結婚するときに、お祝いにあげるよ」
「おかみさん・・・・」
「これ部屋の鍵、渡しておくよ」
「はい、ありがとうございます、
あー・・・ずっとこの町に居たかったなぁ~・・・あの、心の隙間に入って来たのが女神なら恨むよ女神様!」
<ごめん>
「ん?なんか言ったかい?アンちゃん」
「・・・・?気のせい?・・・」
その晩夢を見た、
白い空間に、顔はよく見えないが、女性がひたすら頭をさげて謝っていた
<今度は幸せにするから>
そう聞こえて空間は消えて行った
チュンチュン、小鳥の囀りに目が覚めた
「3時間くらいは寝たかな?・・・あれ女神だったのかなぁ・・・今度はって、何もしないでください!って言いたいわ」
部屋を見渡す、豪華な調度品、ふかふかのベット
「スイートルームだよね・・・こんないい部屋よかったんだろうか?」
ベットから起き上がるとシャワーを浴びにバスルームに向かった、
魔石に水魔法と火の魔法を付与してある、これも王宮の研究室で開発されたものだった
スッキリして、空間収納から新しい下着と平民服を出して着て、レストランに降りて行った
「あら、アンちゃん早いね」
おかみさんが厨房から顔を出して言う
「朝食出来ます?」
「ああ、大丈夫だよ」
「夕べ結構飲んだので、軽くお願いします」
「分かったよ、今日はどうするんだい?」
「母のお墓参りに行った後、冒険者登録して、孤児院に行ってこようかと思います」
「何時まで居てくれるんだい?」
「明日には立とうかと、あまり長居すると、行きたくなくなっちゃいます、でも夢は叶えたいですから」
「そうかい、此処はアンちゃんの故郷だ、何時でも帰っておいでね」
「ありがとうございます」
町は朝早くから活気に満ちていた、花屋で花を買い、町の裏手の小高い丘の上の墓地に向かう
無縁墓石、身寄りのない人がまとめて葬られている墓石だ、基本この国の遺体は火葬される、墓石の下は大きな穴が開いており、そこに骨を入れる、どれが誰の骨かはもう分からない。
墓石に花を添えて、ジョアンナは祈った
「帰って来たよお母さん、この先どうなるか分からないけど、幸せになれるよう頑張るよ」
冒険者ギルドについてドアを開けると、それまでざわざわしていたギルド内がシーンと静まり返った
(なに?不気味なんですけど)
ちょっとビクつきながら、受付に行く
「冒険者登録をお願いします」
「・・・はい、此方の紙に必要事項を書き込んでお持ちください、登録料は銅貨10枚になります」
名前;ジョアンナ・ベルモット(母の性)
性別;女
年齢;20
出身地;ロウタン
学歴;
職歴;なし
犯罪歴;なし
受け付けに、お金と紙を渡す
「先月から、自動ランク判別水晶が配布されましたので、この水晶に手をかざして魔力を一気に注ぎ込んでください。本来ならE級からですが、水晶の判別によってはC級からスタートできます。」
「これが?」
「判別されたら、このプレートに印字されます、されるのはランクだけですが、紙に書いていただいた内容は登録されております、また水晶を使えば内容の確認が出来ます、無くさないでください再発行には、銀貨10枚(10万円相当)と時間がかかりますので注意してください、そして、常に見える所に携帯義務があります」
ジョアンナは水晶に魔力を注ぎ込む、少し手加減しておいた、ロゼッタに注意されていたからだ・・・冒険者登録に際には水晶が壊れるから全力出すなと、話は聞いていたが本物を見たのは初めてだった
「・・・・」
受付嬢は、沈黙した
「あれ?」
ちょっと変に思ったが、プレートを手に取る
「・・・えっと、これはサービスのプレート用のネックレスチェーンです」
そう言ってチェーンを戸惑いながら渡す受け付け嬢
「おう!嬢ちゃん、新人か?俺らが手取り足取り指導してやろうか?」
「はー・・・何処にでも出るんですねあなたの様な奴・・・お決まりですか?でも弱い人に教わっても・・・」
「何ぃ~何いってやる!?」
「え?あの、ベーギルさん、えっと」
受け付け嬢が男に何か言いたそうだが、何かおどおど、びくびくしている
「俺らはC級だぞ!新人が何言ってやがる!」
バーン!ギルドの扉を開けて何人かのちょっと人相の悪い冒険者が入って来た
「おっ居た居た!アンちゃん!」
「あっザイードさん!二日酔い大丈夫?」
「大丈夫に決まっているじゃないか」
「えーさっきまで頭痛って言ってたじゃないか」
と隣の一緒に来た冒険者が言う
「だまれっ!」
くすくすとジョアンナが笑う
「お前ザイードさんの知り合いか?」
焦りだす声を掛けてきた冒険者
「なんだ?お前・・・で?ランク何だった?アンちゃんならCランク確定だろ?」
「Aだった、この横の金の王冠はなんだろう?他の人のには無いよね」
「A?え?本当か?そんなことあり得るのか?聞いてないぞ・・・金の王冠だって!?・・・」
「ギルドマスター、王家の加護付きです、Sランク以外でついてるの初めて見ました、それに新人でいきなりAも」
そういう受付嬢
「特別待遇ってことか・・・まぁ実力は多分問題ないと思うが」
「それと、これを、」
「何これ」
「小切手です、ギルドの貯蓄が金貨1000枚になると渡されるものです、登録終了直後振り込まれました。」
「アンちゃん王宮から追い出されたんじゃ・・・」
「あ?いえ、何時までも居ていいって言われたけど、自分から出て来た、夢をかなえたいからって言ったら、支度金たっぷりで、気を付けてと送り出してくれたけど、ああ、皇太子殿下にいつでも頼ってくれって言われたから、加護がついてるんだ」
(そうか、普通追い出されたと思うよね)
「男爵家に居た時はつらかったなぁ・・・けど、王宮は皇太子殿下が大事にしてくれたから、勉強は嫌だったけどね」
呆然としているのは声を掛けてきた男・・・
「有りえないだろ、新人でAなんて、えこひいきだ!」
「それは無いだろう、王家の加護は王に認められれば基本、どのランクでももらえる、でも冒険者ランクはそうではない、9歳の時にはもう、Aランク魔物を一人で狩っていた居たんだ、有りえる」
「そう言えばここに来るとき、盗賊に襲われた、殲滅しちゃったけど、それもランク上げになってるかもね30人は居たから」
「・・・もしかして、森を焼いたのアンちゃんか?」
「ギルドマスター、騎士たちが言ってたやつですか?」
「ごめん、手加減が・・・延焼しなくてよかった」
絶句するザイード、ギルド長
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