純愛的(※下品というか、英語で言うFワード的な言葉が出てきます)
「ラブストーリー」
亞野実 「自分の好みは、自分にだけ委ねるべきだ、」そう、グルは言った。その日、私は、反政府活動を辞め、グルをスコップで殺した、そして食べた、近所の定食屋で、グルを売った金で、焼き肉を食べた。
鍬土呂 女は肉を食っていた。
亞野実 僕は、一人称を僕にした。自分の好みは自分で決める。僕、ああ、限界だ。何を言ってもつらい。グルを殺した開放感は、ひとときの焼き肉定食。
鍬土呂 あのすいません。
亞野実 僕ですか?
鍬土呂 はい、君と僕しかいないでしょう。この場には。
亞野実 君? 僕…。僕と僕。
鍬土呂 えっと、
亞野実 あ、はい。
鍬土呂 あの醤油、とってもらえますか?
亞野実 はい。
鍬土呂 ぶしつけですまないね。…ちょっといま気が大きくなってて。
亞野実 はぁ。
鍬土呂 ふつうサバは醤油で食わない。塩味が付いているからだ。でも、最後に変わったことがしてみたかった。僕は今日、しぬ。
亞野実 あの、それ、鯖ですよね。塩鯖?
鍬土呂 はい。(醤油のことかな?)
亞野実 …一口貰ってもいいですか?
鍬土呂 ああ。…いいですよ。
亞野実 辛い。
鍬土呂 ご飯…食べます?
亞野実 いやいやいや、
鍬土呂 はい。
亞野実 いくらなんでも、それはないですよ。
鍬土呂 それは、見知らぬ人に自分の箸のついたご飯を食べさせる行為について? それとも、見知らぬ人から、おかずのみならずご飯をまで頂く行為に対して?
亞野実 どっちもです。
鍬土呂 僕は、この子に恋をした。わけでもない。今死のうという人間が、どうしてそんな浮かれた気持ちになれるだろう、やけくそとはいえ、塩鯖に醤油をかけるぐらいしか、見知らぬ人に醤油を取らすぐらいしか、いまの僕には、自分の文脈から欠けた行為をする、気力がない。
亞野実 僕、亞野実っていいます。あの、サバのお礼に、殺して上げます。
鍬土呂 え?(え、ぼくが?)
亞野実 あなたの好きな人を、殺して上げます。
鍬土呂 えっと、それは、つまり、俺の人生をこんなめちゃくちゃにしたやつらを殺してくれるってこと?
亞野実 違いますよ。あなたが好きな人を、殺して上げます、つまり、あなたの恋人とかいたら、殺します。
鍬土呂 うん? お礼、とは?(そもそもなんだっけ)
亞野実 恋人はいますか?
鍬土呂 ……。
亞野実 殺します。
鍬土呂 違う。
亞野実 愛してるんですね。殺します。
鍬土呂 殺された。
亞野実 まだです。
鍬土呂 ・・・・。
亞野実 え、まさか、未来からきたんですか?
鍬土呂 親父さん勘定!
悪八 俺はレイプする。日課だ。レイプをした後は殺す。日課だ。俺は、そういうことができる、自分を美しいと思う。俺は、もうすぐ死ぬだろう。俺のような人間は長生きできない。ライオンたちと違って。だから命の限りレイプする。
鍬土呂 俺は、もともとただの強姦魔だった、それも知的な奴。計画をねって、何ヶ月でも粘って、関係性をきちっと構築してから強姦する。そして殺す。主に小学生ぐらいの、男の子にしか興味がない。顔は重要だ。不細工すぎるのも良くないが。綺麗すぎるのは怖い。
亞野実 なんで死ぬの?
鍬土呂 俺は……。
亞野実 僕が殺して上げる。
鍬土呂 おれを?
亞野実 世界中の、不細工でもきれいでもない小学生たちを。
鍬土呂 強姦に愛はない。
亞野実 じゃあ、小学生は中学生になれる。
鍬土呂 ああ、
亞野実 なんで死ぬの?
悪八 女と男が並んでいる。創世の神話のようだ。男は殺して海に捨てよう。女は殺して山に埋めよう。海彦山彦の神話だ。
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