第16話~登山での出来事~
頂上に近付くにつれ、奈緒子の息が上がっている。かすかに、コンコンと乾いた咳も聞こえるようになった。
「奈緒子大丈夫?」不安げな顔をした僕を見て「ちょっと運動不足なだけ!!」と苦しそうに笑う。
頂上に着くと奈緒子は、その場にへたり込んだ。
「奈緒子?」様子がいつもと違うことに気付いた。
「え...奈緒子?大丈夫?」
奈緒子は体育座りをしたまま顔を下げて動かない。一瞬で自分の血の気が引くのを感じた。
「なお...」
バタン
奈緒子はその場で倒れこんだ。登山客が救急車や処置を色々してくれる。
そんな姿を見て、僕は恐怖で震えながら泣いているだけだった。
救急車で奈緒子は大きな病院に運ばれた。僕の母親や奈緒子のお母さんもすぐにかけつけた。
僕は母親に何度も頬にビンタをされた。
奈緒子は肺に病気が有り、手術をしても30%しか助かる見込みもない位の大きな病気だった。
奈緒子も病気のことは知っていたが、誰にも言わないで欲しいとお母さんにお願いしていたとのことだった。
そして、無事に登山出来たら手術をするとお母さんと約束していたらしい。
緊急で行った手術は成功だった。しかし、倒れたときに呼吸が止まっていて、今は植物人間状態であると医師から言われた。
目が覚めるのは明日か数年先か若しくは永遠にか。僕は医師の冷たい言葉と狂ったように泣き叫ぶ奈緒子のお母さんをただじっと見ているしかなかった。
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