第15話~2度目の山登り~

今年も夏がやってきた。


奈緒子は入院して以来、たびたび学校を休む日が多くなっていた。奈緒子が言うには大きな病気ではなく、母親が大げさに少し咳をしただけで学校を休ませるんだと教えてくれた。


そんな奈緒子から、去年も登った山にもう一度行こうという話が出た。

僕は快く賛成して、約束の日が待ち遠しくカレンダーの過ぎた日をバツ印を付けて、楽しみに残りの日を数えていた。


母親は、「奈緒子ちゃんのお母さんは許可しているの?」と何度もしつこく僕に聞く。

交通費だってそこそこかかるのに、許可無しで行ける訳がない。そんな安易な考えで僕は「うん。」とだけ答えた。


当日、約束の時間より30分も前に着いたにも関わらず、奈緒子が待ち合わせ場所にいた。


「おはよ!奈緒子早くない!?」僕はウキウキした気分で挨拶をする。


「豊が遅いだけ!!」ブーッっとふくれっ面をしながら僕をにらむ。


「えええ?約束の時間って7時じゃなかったけ??ごめん!」僕は時間を勘違いしたのかと思った。


「えへへ、冗談・冗談!私が早く着いただけ!」奈緒子は無邪気に笑い僕をからかう。


「まったく!」今度は僕がふくれっ面になる。


そんな僕の顔を見て奈緒子は笑う。笑う奈緒子の顔見て僕も笑う。こんな日常が僕は大好きだった。

そんなくだらないやりとりをしながら僕達は電車に乗った。




~登山道入り口~


登山道の入り口は相変わらず大勢の人で賑わう。

僕と奈緒子は意気揚々と山を登る。

時折、奈緒子は足を止め「休憩しようー。」と小休憩を取る。


僕は「早く行こうよ!」とせかす。


今思えば、後悔でしかなかった。無知の自分を悔やんでも悔やみきれないこと。もっと奈緒子の事を思ってあげればと...。

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